りんごの街の救急医

救急科専門医によるERで学んだことのまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。Twitterでも医療系のつぶやきをしています@MasayukiToc

2021-01-01から1年間の記事一覧

ERにおける鎮痛

救急外来に来る患者さんの多くは、疼痛や苦痛を抱えています。 それをなるべく迅速かつ十分に除去することは最優先事項と言っても過言ではありません。 評価に夢中になるあまり、患者さんの疼痛をほったらかしにしていませんか? 鎮痛手段は複数ありますか?…

鼻腔内異物の除去方法~どれだけ手段を持っていますか?~

鼻腔内異物で困った経験がある方は少なくないはず…! なんで子供ってこんなに穴があると物を入れたくなっちゃうんでしょうか。 トホホだけど、除去できたときの快感はたまらないですね! minor emergencyは手数があると対応も面白くなるので、 今回は鼻腔内…

review:抗菌薬関連脳症(AAE)

一般病床でもICUでも、「せん妄」は日常茶飯事だと思います。 「ハイハイ、またせん妄ね」とだけ暫定診断をつけて、 その背景疾患を探ることを怠ってしまうことはありませんか? 「抗菌薬関連脳症」( Antibiotic-associated encephalopathy :AAE)なんて考え…

review:外傷後のDVT予防

外傷で入院される患者さんのVTE(DVT+PE)発症率はなかなか高率です。 それでいて出血イベントが絡むことがほとんどであるため、 いつ薬理学的予防を開始するかは多くの場合に悩ましい問題となります。 American Association for the Surgery of TraumaとAme…

mini review:急性アルコール中毒(どのくらいで帰せる?輸液は有益?)

またアルコール絡みで搬入する患者が増えてきました。 先日当直に入ったときに研修医から質問されました。 ・どのくらいで帰せるくらいによくなりますか? ・輸液してみたんですけどあまりよくなりません…? 確かにコモンだけど意外と知られていない分野なの…

case 151: 小児卵巣捻転のtips(Clin Pract Cases Emerg Med . 2021 Feb;5(1):109-112.)

症例 ・初経前の9歳女児 ・2日前からの間欠的右下腹部痛のためER受診 ・CT:周囲および内部に複数の卵胞様構造を伴う7cm*7.5cmの造影効果不良の右卵巣を認めた ・CT後に行われた超音波:右卵巣腫大はあるが「卵巣捻転の証拠はない」と判断された →それ以上の…

review : アルコール性ケトアシドーシス(Alcoholic Ketoacidosis:AKA)

コロナ禍でアルコール関連疾患で救急受診する患者が増えたような気がします。 同僚と話をしていても同様の感覚があるようです。 その中でも頻度が高いAKAについてまとめてみます。 もともとアルコールを慢性的に飲みまくってた人が、 嘔吐したりで食事ができ…

造影剤曝露と6か月後のeGFRの関係(JAMA Intern Med. 2021 Jun 1;181(6):767-774.)

いわゆる「造影剤腎症」の話題には完全に飽きています。 造影剤が腎障害の原因になる可能性はありますが、実際にこれを裏付けるデータには乏しいのが現状です。 造影剤以外にもたくさんの要因がAKIに結び付くはずなんですが、造影剤ばかりが悪者扱いされるこ…

ICUの輸液は急速ボーラスはありか?生食かリンゲルか?(BaSICS trial)

現在、「明日のアクションが変わる ICU輸液力の法則」という本を中心に輸液(だけではなくもっと広い概念を学べている)の勉強をしています。 明日のアクションが変わる ICU輸液力の法則 | 川上 大裕 |本 | 通販 | Amazon 特に体液量管理について考えさせら…

小ネタ:postobstructive diuresis, smaller SMV sign, 小児DKAの初期輸液は生食?

postobstructive diuresis(尿閉解除後利尿) ・尿閉解除後に急激な利尿がつくことがある ・尿閉解除後の2時間で200ml以上 or 24時間で3000ml以上出る場合にPODと診断する ・閉塞解除後の患者の0.5-50%で発症すると報告 (Urol Ann . Oct-Dec 2017;9(4):339-…

review: 食道胃静脈瘤破裂への急性期対応

特に新型コロナウイルス感染症が出てきてからアルコール使用障害での救急受診が増えてきているように感じています。 肝硬変+吐血患者の搬入も多くなっているような。 ということで、今回は食道胃静脈瘤破裂の急性期管理についてまとめます。 主に以下を参照…

review: Surviving sepsis campaign 2021

久しぶりの更新になりました。 りんごの街から引っ越しをして、うなぎと餃子の街に研修に来ており、 なんやかや準備とかで忙しかったのでさぼっていました。 ※漁業や料理の研修ではありません※ 新しい環境に慣れるまではたぶんあまり更新しません。 でも、こ…

review:toxic alcohol

なかなか遭遇しないけど、 ときおりぎょっとするタイミングと検査データで出迎えてくれるtoxic alcohol。 今回はその復習をしてみようと思います。 あまり多くの治療経験がないため実体験に基づいた記載はできていません。。。 主に以下の文献を参考にまとめ…

case 150:低酸素血症、低血圧を呈する80歳男性(J Emerg Med. 2017 May;52(5):741-743.)

病歴/身体所見 ・80歳男性 ・慢性腎臓病/COPD/慢性骨髄性白血病の既往あり ・息切れ/脱力/呼吸困難を訴えて前医受診 →肺塞栓症の初期診断のためERへ紹介受診 ・ここ数日で便秘が強くなり、近医からマグネシウム含有の緩下剤を処方されていた ・BP89/52mmHg, …

SALSA Trial:低ナトリウム血症への高張食塩水急速間欠ボーラス投与の安全性の検討

昨日に引き続き、低ナトリウム血症の話題です。 ガイドラインでの治療方法の推奨は以下を参照してください。 appleqq.hatenablog.com 低ナトリウム血症の過剰な補正はODSのリスクとなることが知られています。 そのため、補正は8-10mEq/L/day(6-8mEq/L程度に…

review:低ナトリウム血症の治療

日常的にはよく遭遇する疾患である「低ナトリウム血症」。 多くの場合には原疾患の治療のみで緊急補正を要しませんが、 神経学的異常が出てくるような場合には緊急補正の適応があります。 緊急補正が必要な場合にどのように動けばよいのか、 ガイドラインを…

case149:殴られてから目が見えなくなった男性(Ann Emerg Med. 2021 Jun;77(6):649-656.)

病歴/身体所見 ・58歳男性 ・既往歴:双極性障害、アルコール使用障害 ・暴行を受けてから両目の視力が低下したことを主訴にER受診 ・右瞳孔は前眼部が濁っており、完全に視力喪失していた 検査 ・POCUSにより左眼球後方に可動性のある楕円形の高エコー域を…

review:そういえばその人、QT延長してない?

QT延長はしばしば問題になります。 特にうちの病院は精神科単科病院が系列にあるので、 某所からの患者さんはほとんど(!?)QT延長しているような気さえします。 何が怖いって、、、致命的な不整脈がでちゃうところです。 QT延長といえばTdP というようにほ…

review:RRT開始のタイミング

腎代替療法(RRT)開始のタイミングについての話題です。 やべー、最近このあたりの話題おろそかにしてたー! まぁ絶対的な基準さえ逃さなきゃとりあえずいんじゃね? 的な理解でよさそうに思っていましたが、少しまとめておきます。 Gaudry S, Hajage D, et…

case148:左大腿部の腫脹と疼痛を訴える57歳男性(Ann Emerg Med. 2021 Jun;77(6):e117-e118.)

コレ自体は救急外来で見たら、 「後日整形外科で精査してもらってください」系の疾患かもしれません。 でも大腿部だけではなくて体のさまざまな部位に発生するようなのでコレを知っておくと汎用性が高いかも⁉ 病歴/身体所見 ・57歳男性 ・2か月前からの左大…

case147:帯状疱疹って感染管理どうするんだっけ?(J Am Coll Emerg Physicians Open. 2021 May 1;2(3):e12442.)

最近は感染対策と言えばもっぱらCOVID-19ですが、 結核、麻疹、水痘といった空気感染対策を要する疾患も忘れてはなりません。 「ケツに麻酔」って覚えるんでしたね。 帯状疱疹で空気感染対策を要する場合ってどんなだっけと思い返すきっかけとして 備忘録が…

case146:特発性細菌性腹膜炎との鑑別を要する疾患(BMC Gastroenterol. 2021 Jun 24;21(1):267.)

病歴/身体所見/検査所見 ・71歳女性 ・3年前にADPKDによる慢性腎臓病と診断/4年前に右中大脳動脈の未破裂動脈瘤に対してクリッピング術を受けている ・飲酒歴なし、喫煙歴なし ・1か月前に突然右季肋部痛を発症し受診 ◦7カ月前のCTでは認めなかった右肝嚢胞…

review:特発性細菌性腹膜炎(spontaneous bacterial peritonitis: SBP)

当地域はアルコール絡みの疾患が多い地域です。 ➀地域性としてもともとの飲酒量が多いと思います。 関東から青森に来てびっくりしたことの1つにスーパーのアルコールコーナーの広さがありました。関東ではアルコールコーナーはせいぜい1列でしたが、青森で…

review:下部消化管出血ガイドライン(European Society of Gastrointestinal Endoscopy)

下部消化管出血のマネジメントについてのガイドラインです。 European Society of Gastrointestinal Endoscopyより発表されていたので 新しい気持ちで読んでみました。 良い復習になりました。当院での対応は大体標準的なんだと確認できました! Triantafyll…

case145:泣き止まない生後8週間男児(BMJ Case Rep. 2017 Nov 1;2017:bcr2017221002.)

病歴/身体所見 ・生後8週男児 ・6時間前に発見された左中足趾の腫脹と発赤 ・外傷歴なし ・痛みを訴えるように泣き続けているという ・左足第3趾は腫脹しておりCRT延長、よく見ると髪の毛と綿が巻き付いていた ・局所麻酔を使用して鉗子と針により除去を試み…

review:高カリウム血症のマネジメント

特に緊急度が高い電解質異常であり、 かつ日常的に遭遇頻度の高い高カリウム血症のマネジメントについて まとめてみます。 具体的にどう動けばよいかスッキリすると思います。

case144:術後に高血圧と頻脈を呈し急変した61歳男性(N Engl J Med. 2021 Jun 3;384(22):2145-2152.)

病歴 ・慢性的な膝痛を自覚しており人工膝関節置換術を受ける予定になっている61歳男性 ・術前の血圧178/92mmHgであり本態性高血圧と判断されhydrochlorothiazideが投与され降圧された ・bupivacaineによる脊椎麻酔とmidazolam+propofolによる鎮静下に上記手…

case143:心窩部痛と左胸部の絞られるような疼痛を訴える68歳女性( Respir Med Case Rep. 2018 Oct 9;25:270-273.)

病歴/身体所見 ・68歳女性 ・2日前からの徐々に増悪する鋭い心窩部痛と左胸部の絞られるような疼痛のため受診 ◦深呼吸により増悪、疼痛が改善する体位はなかった ・外傷歴はなし、最近の旅行歴なし、家族で同様の症状なし ・既往歴:高血圧/脂質異常症/甲状…

review:ERにおける心房細動への対応

心房細動は、ERでも病棟でも遭遇しない日はないと言えるほど頻度の高い疾患です。 高齢者や重症患者ではその有病率が有意に多くなり、もはやcommon diseaseとなりました。 しかし、対応に苦慮することが多いのも心房細動だと思います。 頻脈でバイタルサイン…

case142:陰部にあざができた⁉84歳男性(J Am Coll Emerg Physicians Open. 2021 May 1;2(3):e12431.)

病歴/身体所見 ・84歳男性 ・前日夜に突然発症した痛みを伴わない性器のあざを主訴にER受診 ・腹痛や腹部外傷なし、そのほかに特記すべき既往なし ・腹部はやわらかく圧痛なし、腫瘤は触れなかった ・BP133/88mmHg, HR93bpm ・恥骨上に境界明瞭な斑を認め、…