コレ自体は救急外来で見たら、
「後日整形外科で精査してもらってください」系の疾患かもしれません。
でも大腿部だけではなくて体のさまざまな部位に発生するようなのでコレを知っておくと汎用性が高いかも⁉
病歴/身体所見
・57歳男性
・2か月前からの左大腿部の腫脹と疼痛のためER受診
・BT36.8℃, PR77bpm, BP125/85mmHg
・左大腿部外側に直径12.5cmのやわらかかつ境界明瞭な腫瘤を触知した
検査
・血液検査では異常を指摘できなかった
・超音波
…低エコー領域、内部は均一。カラードップラーでは腫瘤内に血流は認めなかった
・MRI…左大腿部外側に直径13.7cmの境界明瞭な腫瘤を認めた
・腫瘤への穿刺では悪性腫瘍細胞は認めなかった
・外科的切除を受け、病理学的には脂肪壊死と液状化が認められた
診断
左大腿部脂肪壊死/液状化
・外傷や血流供給の途絶により、脂肪組織小葉が急速に梗塞を起こす説が有力となっている
(Med Ultrason. 2020 Sep 5;22(3):397-380.)
・腹部や大腿部などの脂肪が多い場所や外傷を受けやすい部位に好発する
(J Belg Soc Radiol. 2016 Mar 31;100(1):53.)
・腹壁に発症した場合、急性腹症を模倣し、虫垂炎などが鑑別になることもある
◦腹腔内に発症することもある!!
・治療は外科的切除でよい
たとえば腸間膜脂肪壊死なんてのもあります。
(J Belg Soc Radiol. 2016 Mar 31;100(1):53.)
私のおなかの脂肪も壊死してくれないでしょうか…。
また、以前紹介しましたが縦隔(心臓)脂肪壊死なんて病態もあります。
良性の胸痛の鑑別疾患になります。
好発部位はありますが、脂肪があるところにはいずれも発生する可能性があるため、鑑別には挙げておいてもいいのかもしれません。
もちろん、ERでは致命的な病態やもっとコモンな疾患から探すべきですが…。
まとめ
・脂肪壊死は、腹部や大腿部などの脂肪が多い場所や外傷を受けやすい部位に好発
・脂肪組織が梗塞を起こしている説が有力である