病歴/身体所見
・84歳男性
・前日夜に突然発症した痛みを伴わない性器のあざを主訴にER受診
・腹痛や腹部外傷なし、そのほかに特記すべき既往なし
・腹部はやわらかく圧痛なし、腫瘤は触れなかった
・BP133/88mmHg, HR93bpm
・恥骨上に境界明瞭な斑を認め、陰嚢や陰茎の左側にもあざが認められた

検査
・血液検査…Hb9.5g/dL(前回は14.0g/dL), Pltや凝固など異常なし
さて、次の一手をどうしますか?
「おじいさん、夜中にトイレに起きて転んだんじゃないの?」
とかって思ってしまいそうですが…。
診断
腹部大動脈瘤破裂
・壁在血栓により自己密閉されたため突然死には至らなかったと考えられる
・手術を拒否し、経過観察となった
・CT…最大径7.6cmの壁在血栓を伴う腹部大動脈瘤を認めた
◦解離やextravasationの所見はなかった
◦骨盤内には腹水を認め、陰嚢内にも液体貯留を認めた


疼痛がない大動脈瘤破裂シリーズでした。
嗄声を呈した無痛性胸部大動脈瘤破裂の症例を紹介しました。
今回は疼痛がなしで、特に具合の悪さはない、でもなんか皮疹があるくらいな症例でした。正直、これを診断まで結び付けられるかは自信ないです。
忙しくなければ腹部超音波くらい当ててみて、発見できるでしょうか。。。
自験例でもそうですが、意外と破裂していても疼痛が全くないってことがあります。
そんな場合には失神やめまいなんかを主訴に受診することが多いです。
Uptodateを孫引きして調べてみると以下の文献がヒットしました。
要約すると…
・疼痛がないタイプの大動脈瘤は意外と多いかもしれない
◦2010年のretrospective study…腹部大動脈破裂症例66例
‣主症状を「疼痛」と訴えるのは76.6%…腹痛45.3%/腰痛17.2%/腹痛+腰痛14.1%
‣その他は、失神や具合の悪さなどなど
(Ann Vasc Surg. 2010 Apr;24(3):308-14.)
もしかしたら4-5人に1人くらいは全く疼痛がない、または訴えられないのかもしれません。
・皮下出血斑については、場所によってさまざまな呼び方をされます。
◦これらの所見を見た際には大動脈瘤破裂の可能性を考えて動くこと
‣大動脈瘤破裂後に緩徐に出現し、しばしば数日ほどかけて進行する
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Stabler's sign…恥骨部
Bryant's sign…陰嚢部
Grey Turner’s sign…側腹部
Fox’s sign…鼠径部
Cullen’s sign…臍部
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今回の大動脈瘤破裂のヒントは、「あざ」だけでした。
いやぁ~、こりゃ難しい!
まとめ
・無痛性大動脈瘤破裂は20%強くらいの割合で存在するかもしれない
・腹部陰部の皮下出血をみたら大動脈瘤破裂を疑う