病歴/身体所見
・58歳男性
・既往歴:双極性障害、アルコール使用障害
・暴行を受けてから両目の視力が低下したことを主訴にER受診
・右瞳孔は前眼部が濁っており、完全に視力喪失していた
検査
・POCUSにより左眼球後方に可動性のある楕円形の高エコー域を認めた
診断
外傷性水晶体脱臼
眼科医の診察を受け、緊急手術となった。
・水晶体脱臼は眼科救急の1つ
・外傷で最も多く、Ehlers-Danlos症候群/ホモシスチン尿症/Marfan症候群/Weill-Marchesani症候群などでも認められる
(J Emerg Med. 2015 Jun;48(6):e135-7./Am J Emerg Med. 2013 Jun;31(6):1002.e1-2./Clin Anat. 2018 Jan;31(1):6-15.)
・前方水晶体脱臼は急性緑内障予防のために緊急手術の適応
(Middle East Afr J Ophthalmol. Jan-Mar 2015;22(1):129-30.)
※本症例は後方脱臼でしょうか
・CTによって適切な診断は可能であるが、POCUSは同等の検出率でより迅速に可能
(JAMA Netw Open. 2020 Feb 5;3(2):e1921460.)
ちなみに、これは水晶体の前方脱臼でしょうか。
( N Engl J Med. 2014 Apr 3;370(14):1343. )
普通見えるはずのない水晶体が虹彩より前に出てきているためにその全貌が明らかになっています。
この人は運動をしていて急に目が痛くなって水晶体脱臼したそうです。
なにか基礎疾患があったのでしょうか。
眼球の鈍的外傷は非常に軽微に見えたとしても、実は意外と損傷があることが多く、個人的には大丈夫と思っても、後日眼科フォローしていただくことにしています。
前房出血や硝子体出血、網膜剥離なんかは軽微な症状のことがあってよく見落とされることがある疾患です。
眼球の鈍的損傷は苦手としていますし、眼科医以外はあまり得意な人はいないかもしれませんが、たとえば、最低限以下のような所見をチェックして疾患を想定しておくとよいと思います。