いわゆる「造影剤腎症」の話題には完全に飽きています。
造影剤が腎障害の原因になる可能性はありますが、実際にこれを裏付けるデータには乏しいのが現状です。
造影剤以外にもたくさんの要因がAKIに結び付くはずなんですが、造影剤ばかりが悪者扱いされることが多いように思います。
そのほかの原因は考えていない:思考停止されているように思えてむずがゆいです。
とりあえずまだ根強く残る問題ではあるため、また取り上げることにします!
Goulden R, et al. Association of Intravenous Radiocontrast With Kidney Function: A Regression Discontinuity Analysis.
JAMA Intern Med. 2021 Jun 1;181(6):767-774.
PMID: 33818606; PMCID: PMC8022267.
前提知識の整理
これまでにもこのブログでは、造影剤と腎障害の関連について複数回取り上げてきました。
これまでには「造影剤とAKI」が語られる研究が多かったように思いますが、
今回の研究では6か月後のeGFRで語られているので興味深いと思って読んでみました。
研究の概要
・カナダ、2013-2018年にD-dimer検査を受けた18歳以上のすべての救急患者を対象
・CTPA実施のカットオフとなるD-dimer500ng/mL付近の患者では、造影剤曝露の確立が著しく異なるが、それ以外の潜在的な交絡因子に関しては類似しているはずであるという事実を利用してfuzzy regression discontinuity designを使用した
・primary outcome…ER受診日から6か月後までのeGFR
・156028人がD-dimer検査を受けた
◦平均年齢53歳、56%が女性、平均eGFR86ml/min/1.73m2
◦カットオフ前後の患者では、ベースラインに有意差なし
・6か月後のeGFRと造影剤の関連性を示すエビデンスはなかった
◦-0.4mL/min/1.73m2 (95%CI, -4.9 to 4.0)
・RRTの必要性、死亡率、急性腎障害との関連も指摘されなかった
まとめ
既存の観察研究よりも強力な因果関係の解釈を可能にする研究デザインを使用して、造影剤曝露が臨床的に重大な長期的腎機能障害と関連しているかどうかを検証する目的で行われた研究でしたが、6か月後のeGFRと造影剤の関連性を示すエビデンスはありませんでした。
この研究の強みは以下の部分に集約されると思います。
・サンプルサイズが大きい
・潜在的な交絡因子を回避するためにfuzzy regression discontinuity designを用いた
※無作為化が不可能な場合にこれを行うことで、その平均的な治療効果の推定が可能となるようです。詳しくはわかりません。
・短期的なAKIを指標にするのではなく、ER受診から6か月後のeGFRに設定することで選択バイアスの問題にも対処している
もうこの話題はいいっすね。いったん終止符でどうでしょうか?