りんごの街の救急医

青森県弘前市の救急科専門医による日々の学習のまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。Twitterでも医療系のつぶやきをしています@MasayukiToc

小ネタ:postobstructive diuresis, smaller SMV sign, 小児DKAの初期輸液は生食?

postobstructive diuresis(尿閉解除後利尿)

尿閉解除後に急激な利尿がつくことがある
尿閉解除後の2時間で200ml以上 or 24時間で3000ml以上出る場合にPODと診断する
・閉塞解除後の患者の0.5-50%で発症すると報告
(Urol Ann . Oct-Dec 2017;9(4):339-342.)
・生理的PODであれば24時間程度で自然に治癒
・病的PODであれば48時間以上利尿が継続する
電解質や尿量をモニタリングしながら過剰輸液を避けるように後追いで輸液を行う
 ◦電解質補充や補液以外の介入を要さない
 ◦尿量は2時間毎に測定し、血清/尿中電解質を12時間毎に測定し補正すること
多くの患者では経口補水により尿量増加に対応できるため自由に飲水を促すこと
(Can Fam Physician. 2015 Feb;61(2):137-42./Emerg Med Pract. 2021 Mar;23(3):1-28.)
 
特にICUに入室するような尿閉を背景とした敗血症などの患者で問題になります。
外来で見ているような尿閉だけ解除して帰宅可能な患者では、飲水を自由にしてもらうことであまりおおごにはならなそうです。
 

smaller SMV sign

smaller SMV signは、造影剤を使用せずに単純CTでも確認できるため迅速かつ確実に観察可能
 ◦SMA塞栓症診断において、感度70%/特異度99.2%

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ふつうはSMAよりSMVの方が大きいらしいですが、これが逆転すると問題になることがあります。SMA内の血管内容量が低下すると動脈はつぶれないけど、それに応じて静脈はつぶれて小さくなってしまうということのようです。血管内になにか詰まったり、血流が低下したりなんかを考えなければならないんですね。
 
だから、以下のような疾患が問題になるので検索が必要です。

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(Acute Med Surg . 2017 Sep 28;5(2):129-132.)

 

小児DKAの初期輸液は生食?

まだ成人DKAほど研究が進んでいないようですが、以下のような論文を見つけました。

 

n数が少ない研究が多いし、outcome設定がいまいちのものもありますが、まぁどっちでもいいんじゃね?と個人的には思います。風潮的にはリンゲル液に移行していくのではないかと思っていますが。

 

(J Paediatr Child Health . 2017 Jan;53(1):12-17.)
・77人の小児DKAを対象とした二重盲検RCT
・ハルトマン液 vs 生食での比較
両群間でDKA改善までの時間(HCO3- 15mmol/Lに達するまでの時間)に有意差なし
 
(Crit Care . 2020 Jan 2;24(1):1.)
・SPinK trial
・1か月~12歳の小児DKA66人が対象となった二重盲検RCT
 ◦Plasma-Lyte群 vs NS群に割り付け
新規発症/進行性のAKI発症率は有意差なし
・そのほか、secondary outcomeもそう変わらず
 
(Pediatr Emerg Care . 2021 May 1;37(5):e236-e242.)
・0-17歳の小児49737人を対象としたretrospective study
・生食単独:88%、LR単独:4%、NS+LR併用:8%
・コストはLR群で減少、入院期間は有意差なし
secondary outcomeだが、脳浮腫はLR群で少なかった
 ◦1000例あたりLR群:12.7 vs 生食群:34.6
 
こんなに脳浮腫発症率に差が出るとLRを使いたくなりますが、今後どうなるのでしょうか。