鼻腔内異物で困った経験がある方は少なくないはず…!
なんで子供ってこんなに穴があると物を入れたくなっちゃうんでしょうか。
トホホだけど、除去できたときの快感はたまらないですね!
minor emergencyは手数があると対応も面白くなるので、
今回は鼻腔内異物の除去方法について簡単なreviewをします。
以下を参照しています。
➀
Ayotunde O, et al. Nasal foreign body removal: Success rates for techniques and devices.
Am J Emerg Med. 2021 Nov 19:S0735-6757(21)00931-1.Epub ahead of print.
PMID: 34840003.
②
https://www.oatext.com/pdf/OHNS-1-102.pdf
各手法の成功率
➀の文献より、鼻腔内異物除去方法毎の成功率が記載されていますので、
まずはそれを見ていきます。
・鼻腔内異物と診断されてERで診察を受けたすべての小児(19歳以下)を対象にしたretrospective cohort study
・2013年~2020年に米国の7病院で行われた
・合計1199人に鼻腔内異物が認められた
◦両側性は3.1%、2つ以上の異物があったのは2.1%、耳異物合併は2名
◦異物残存時間は16.5±72.5時間
・46種類の鼻腔内異物が認められた
◦ビーズ…29.7%
◦食物…18.6%
◦小さなおもちゃ…14.3%
◦ティッシュ/紙…9.9%
◦石…5.6%
◦ボタン電池/磁石…1.3%
・鼻腔内異物の96.4%が表に記載された1つ以上の手法を用いて除去された
◦1手法で除去成功…71.9%
◦2手法で除去成功…18.7%
◦3手法以上で除去成功…5.8%
以下の結果が導きだされました。
・バルーンカテーテルを使用すると初回成功率が高くなる(95.5%)
◦鼻腔後方に位置し、器具による除去が難しい場合に特に有効
・鼻腔前方に位置する場合には鉗子を使用して除去するのが最適
確かに、多くの場合にはその2つの手法で行けるんでしょう。
異物の性状や位置によってはこの2つではまかなえないこともありますので、
色々な手法を紹介してみたいと思います。
基本的には、「一発で決めること!」がとても重要です。
そもそも子供はなかなか除去をさせてくれないし、
それも2回目になるとなおさらです。
経験が浅い場合には経験豊富な上級医の指導を受けることは必要です。
あと、今回の研究でも報告されていますが、
反対側に2つ目の異物があったり、耳異物など他の穴の異物があったりすることがあるため
見逃さないようにありとあらゆる穴をチェックするのを忘れないようにします。
適切な体位
適切な体位をとらせることは、除去率に直結します。
必ず以下のような体位をとらせましょう。
鼻うがいをさせる場合には前傾姿勢にさせます。
いろいろな除去方法
陽圧法
結構有名になってきていますが、成功率は50%程度と振るいません。
magic kissで取れたときには親も医療従事者も感動しますが、
子供はあまりいい顔をしません。
・鼻かみ…反対側の鼻腔をふさいで鼻をかませる
‣幼い場合には不可能
・BVM法…口と異物がない方の鼻をBVMでふさいで強制的に空気を送り込む
・magic kiss…親がBVMの役割になる
・修正magic kiss…親と子供が口にストローを加えてmagic kiss
バルーンカテーテル
・なんでもいいのでバルーンカテーテルを鼻腔に挿入
‣この際は異物の上方から挿入かつ遠位側へ留置
・異物を超えたらバルーンに1-3mlほどの生食を注入
・緩やかに牽引して物質を除去する
キュレット
・奥から掻き出すように使用
(Clin Otolaryngol . 2019 Jul;44(4):660-663.)
クリップ
・クリップを変形させることでも使用可能(上記のような器具がないとき)
・固形物に適している
これ、おもしろいですね。小さなおはじき的なものをかきだしたことがあります。
サクション
・吸引を行い、異物を吸着できたら引き抜く
・普通のサクションチューブ先端には側溝があるためそこはカットしておくこと
・密着度が上がるためゼリーを塗布しておくとよいこともある
・丸い異物、固形物に有効であることがある
個人的にはコレをよく使います。
サクションチューブ先端をカット、ゼリーでべとべとにしておくのはtipsです。
hook-scope法
・細径の経鼻内視鏡を使用する
・鼻腔内異物の上方を乗り越えるように内視鏡を進める
・異物を巻き込むような操作をしてフックで包み込むように除去する
・把持できない丸い異物に適している
生食washout
・患者を前傾姿勢にして、シリンジを異物と反対側の鼻腔に挿入
※可能ならえんぐという音を出させながら洗浄するとのどの奥が閉じてよい
・対側の外鼻腔から粒子状の異物をゆっくり洗い出す(鼻うがいのような感じ)
・もろい異物に適している
接着剤や磁石
・木製綿棒の先端にダーマボンドを塗布
・鼻腔内や鼻毛に注意して異物に接着させる
・緩徐に引き抜く
・異物が金属の場合には磁石も有効
まとめ
・鼻腔内異物を見たら、反対側に2つ目はないか、耳はどうかなど検索を怠らないこと
・患児には適切な体位をとらせること
・鼻腔内異物を除去するための手技を複数身に着けておくこと