昨日に引き続き、低ナトリウム血症の話題です。
ガイドラインでの治療方法の推奨は以下を参照してください。
低ナトリウム血症の過剰な補正はODSのリスクとなることが知られています。
そのため、補正は8-10mEq/L/day(6-8mEq/L程度にしておいた方がよいとも)に抑えるように推奨があります。
ガイドラインでは、低ナトリウム血症の補正には少量の固定された用量を断続的にbolus投与する方法が推奨されています。
一方で、3%食塩水の持続静注という方法もありますが、こちらは補正の際に複雑な計算を要することが知られています(経験上そうですよね?)。
そこで、低ナトリウム血症の治療において高張食塩水を急速間欠投与することの安全性を検討するための研究が行われました。
Baek SH, et al. Risk of Overcorrection in Rapid Intermittent Bolus vs Slow Continuous Infusion Therapies of Hypertonic Saline for Patients With Symptomatic Hyponatremia: The SALSA Randomized Clinical Trial.
JAMA Intern Med. 2021 Jan 1;181(1):81-92.
PMID: 33104189; PMCID: PMC7589081.
・韓国の3施設で行われた前向き多施設非盲検RCT
・対象…中等度~重度の症状を呈する低Na血症(Na≦125mEq/L)、18歳以上の成人
◦中等度…嘔気/頭痛/傾眠/脱力/全身倦怠感など
◦重度…嘔吐/昏迷/昏睡(GCS≦8)/痙攣など
・3%食塩水が24-48時間投与された
◦急速間欠ボーラス群(RIB)
◦緩徐持続静注群(SCI)
・血清Na値は6時間ごとに48時間にわたり測定
・投与量は症状の重症度に応じて分類された
※急速間欠ボーラスの方法
・最初の24時間にやること
◦中等度の症状がある場合…3%食塩水2ml/kgを20分かけて投与
◦重度の症状がある場合…3%食塩水4ml/kgを40分かけて投与
◦Naが5-9mEq/L上昇かつ症状が改善するまで3%食塩水2ml/kgを20分かけて投与
‣血清Na再検と投与の時間は1/6/12/18/24時間時点
・次の24-48時間にやること
◦(Naが10-17mEq/L上昇またはNa130mEq/Lになる)かつ症状が改善するまで3%食塩水2ml/kgを20分かけて投与
‣投与の時間は30/36/42/48時間時点
・relowering治療は5%ブドウ糖液10mL/kgを1hで投与またはデスモプレシン2mcg静注
・178人がランダム化された
◦平均年齢73.1歳、平均Na118.2mEq/L
◦サイアザイドとSIADHが約3割ずつ、副腎不全が16%など
◦脱落がRIB群15人/SCI群18人と多かった
‣プロトコル違反がRIB群10例/SCI群14例…対応への不慣れがあるよう
・primary outcome…過剰補正発生率
(24時間で12mmol/Lまたは48時間で18mmol/L以上の補正)
◦RIB群:17.2% vs SCI群:24.2%
‣絶対リスク差:-6.9; 95% CI -18.8% to 4.9%
・secondary outcomeや事後解析によれば、RIB群の方が1時間以内に目標を達成した患者の割合が高い/reloweringを要した症例が少なかった
・死亡率は変わらず、両群ともにODS発症はなし
結論:
「低ナトリウム血症の治療において、高張食塩水を急速間欠ボーラス投与することは緩徐持続静注することと比較して、安全性に有意な差はなかった」
もう十分に検討されているものだと思っていましたが、
高張食塩水の断続投与と持続投与の安全性を比較した最初の前向きRCTだそうです。
知りませんでした、意外!
Limitationは以下のように多く見受けられます。
・95% CIが広い…大規模な研究を要する
・プロトコル違反のため多くの患者が除外された
・患者中心のアウトカムではなかった
・非盲検化試験
・除外基準が多い(実際に血清浸透圧測定は時間がかかる:推定なら可能だが)
プロトコル化されていて非常に実践的でいいなぁとは思いました。
急速間欠ボーラス投与はなんとなくガイドライン通りの方法ですし。
いつNa再検するか明確だし。
過補正してしまった場合の対応についても言及されているし。
今後さらなる大規模研究で検討されることを期待します。