病歴/身体所見
・90歳女性
・高血圧/消化性潰瘍の既往あり
・突然発症の鋭い腹部全体痛を自覚してER受診
・傾眠、発熱はなし
・HR65bpm, BP86/46mmHg
・腹部は全体的に圧痛あり
・Hb11.4g/dL, Lac 4.4mmol/L
検査
・右季肋部の腹部超音波
A:肝(*)の上に不均一な腫瘤(矢頭)を認める
B:Doppler modeで拍動性血管外漏出像を認める
※Elderly Woman With Diffuse Abdominal Pain and Shock - Annals of Emergency Medicine (annemergmed.com)にて動画を見ることができます。
・造影CT
・肝(*)の上に血腫を認める
◦胃十二指腸動脈(矢頭)が原因の可能性あり
◦腹水のCT値は血性を示唆していた(矢印)
診断
胃十二指腸動脈破裂
・血管造影検査…胃十二指腸動脈分枝から活動性の出血を認めた
・動脈塞栓術を実施され、4日後に退院した
・胃十二指腸動脈破裂はまれだが致命的疾患
・動脈硬化/高血圧/外傷が原因となる
(World J Gastrointest Surg. 2010 Sep 27;2(9):291-4.)
・腹痛/吐血/下血/出血性ショックを呈する
(Ann Surg Innov Res. 2013 Apr 16;7(1):4.)
・腹部超音波検査はスクリーニング検査として適し、確定診断と治療は血管造影によりなされる
・血行動態不安定であったり、動脈塞栓術が失敗した場合には緊急外科的介入が必要になる
(Acute Med Surg. 2015 Sep 22;3(2):192-194.)
ちなみに、胃十二指腸動脈の仮性動脈瘤増大により胆道閉塞や膵炎を起こすこともあるようです。
(Ann Vasc Surg. 2020 Oct;68:571.e9-571.e13.)
まとめ
・ショック、腹痛を呈する高齢者では動脈が破けた/裂けた/詰まったを考えること
・胃十二指腸動脈破裂はまれだが致命的疾患
・介入は安定していれば血管造影、不安定なら開腹術を急げ
・仮性動脈瘤形成をすると胆道閉塞や膵炎の原因ともなりうる