病歴/身体所見
・67歳女性
・数時間持続している心窩部痛のためER受診
・5年前に膵炎既往があり、仮性膵嚢胞の合併があることがわかっている
・BP205/110mmHg, HR83bpm, 発熱なし
・心窩部に筋性防御を伴わないが著明な圧痛を認めた
検査
・血液検査…Hb低下なし、lipase 111IU/L
・膵炎が疑われ、腹部超音波とCTが行われた
膵尾部領域に5.8cm*5.5cmの内部不均一なmassを認めた
膵尾部に嚢胞性腫瘤(矢頭)と、その内部にextravasationを認める
診断
仮性膵嚢胞内出血
・後膵動脈に対する動脈塞栓術が実施された
・仮性膵嚢胞は膵炎の合併症として一般的
・嚢胞内出血はまれではあるが、致命的な病態である
◦死亡率は15-50%にものぼる
(World J Gastroenterol. 2014 Nov 21;20(43):16132-7.)
・診断の遅れにより出血性仮性嚢胞破裂などの合併症を引き起こし、腹腔内出血やショックへと至る
・症状…腹痛/貧血/下血など
(Am J Surg. 2006 Jul;192(1):87-8.)
・原因動脈の血管造影による塞栓術が治療の中心となる
(Arch Surg. 1997 Sep;132(9):1016-21.)
・難治性の場合には手術も考慮される
身体所見と既往歴からはそれほど診断は難しくなさそう…。
症状に「下血」というのがまた診断を迷わせそうな。
まとめ
・膵炎の合併症として仮性嚢胞がある
・まれだが仮性膵嚢胞内出血を発症することがあり致命的な病態である
・仮性膵嚢胞内出血の治療は動脈塞栓術による