病歴/身体所見
・73歳女性
・1週間前から持続する嗄声/嚥下障害/呼吸困難のためER受診
・頚静脈怒張あり、胸骨上部左縁に収縮期雑音を聴取
検査
・喉頭鏡検査により左声帯麻痺が認められた
・CXR:心拡大と肺動脈の拡張を認めた
・CT:肺動脈瘤(最大径50.8mm;男性29mm/女性27mm)を認めた
診断
・心臓血管外科に入院となった
・心臓超音波検査にて左室駆出率>60%/僧帽弁および三尖弁逆流/右室流出路拡大4.1cm/重度肺動脈弁狭窄が明らかになった
・肺動脈血管形成術を受け、20日後に退院した
・声帯麻痺は外科的介入後に改善した
・Ortner症候群は、心血管疾患による左声帯麻痺のために嗄声を呈する症候群を指す
◦左房拡大/大動脈拡大/動脈瘤/大動脈解離/肺動脈拡大など
(J Cardiol Cases. 2016 Dec 8;15(3):88-90.)
・肺動脈瘤によるOrtner症候群は他の心血管疾患に比較してさらにまれ
◦弁膜症/左‐右シャント/結合組織病/外傷/医原性/感染症/肺高血圧症/先天性心疾患/悪性腫瘍などが原因になる
(Ital Heart J. 2004 Mar;5(3):232-7./Cardiovasc Diagn Ther. 2018 Jun;8(3):350-361./Int J Cardiovasc Imaging. 2019 Jul;35(7):1357-1364.)
・肺動脈弁狭窄症は狭窄部位より遠位の乱流を起こすことで肺動脈拡大の原因となる
・半回神経の圧迫による嗄声は肺動脈破裂の予測因子とされている
(Case Rep Med. 2012;2012:230736.)
・治療は手術による修復を受けることによる
◦手術により生命予後/反回神経麻痺を改善させることができる
(Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2016 Sep;23(3):438-42.)
なんらかの疼痛があればわかりやすいかもしれませんが、
嗄声で胸部疾患を疑えるかどうかがポイントです!
まとめ
・心血管疾患により左声帯麻痺を発症することがある