病歴/身体所見
・28歳男性
・2週間持続する嚥下障害のためER受診
・BT38.7℃, HR131bpm, BP150/75mmHg, RR18
・胸骨部に肉芽組織に覆われた1cmほどの創傷を認める
検査
・レントゲン…胸骨を貫く異物を認めた
・CTA…胸骨を貫通した8.7cmの釘と、7.2cm*4.6cmの前縦隔血腫を認めた
◦釘の遠位部は上行大動脈の仮性動脈瘤内に達していた
前縦隔血腫(赤矢印)と仮性動脈瘤(橙矢印)内に位置する釘
診断
大動脈損傷による嚥下障害
・緊急手術となった
◦釘の遠位部周囲には膿と血腫が認められた
◦大動脈に4cm弱の開窓部がありパッチ修復された
・2週間前にネイルガンで自傷したことを後に語った
・大動脈と食道は近接しているため、大動脈疾患が嚥下障害を引き起こすことがある
(BMJ Case Rep. 2015 Sep 15;2015:bcr2015211726.)
・嚥下障害の鑑別として大動脈疾患の評価を怠ると、合併症発症率と死亡率が増悪する
(Acta Otolaryngol. 2010 May;130(5):637-40.)
・慢性的な嚥下障害であっても大動脈疾患を除外することはできないことに注意
(J Vasc Surg Cases Innov Tech. 2019 Nov 13;5(4):501-505.)
症例49:急性発症の嗄声を主訴にER受診した81歳男性(J Emerg Med. 2020 Nov;59(5):e199-e201.) - りんごの街の救急医 (hatenablog.com)
嚥下障害でも大動脈瘤!ですね。
しかし釘が刺さっているとは…よく即死しませんでした。。。
まとめ
・嚥下障害や嗄声の原因として大動脈疾患を想起すること
・慢性的な嚥下障害の訴えであっても大動脈疾患を除外することはできない