りんごの街の救急医

救急科専門医によるERで学んだことのまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。Twitterでも医療系のつぶやきをしています@MasayukiToc

関節リウマチの合併症 メトトレキサート内服中

関節リウマチは合併症が多くてほんと難しいっ!!!

 

敗血症性ショックを疑う状況で、骨髄抑制も起きている…。

しかも内服薬見るとあまり自分では使用したことがない薬が並んでいる…。

メトトレキサートってヤバいって聞いたけど、実際どうすりゃいいのか…。

 

こんなときにはロイコボリンレスキューなるものがあるようです!

 

ガイドラインとUpToDateから調べてみました。

(関節リウマチ治療におけるメトトレキサート診療ガイドライン2016年改訂版/UpToDate"Therapeutic use and toxicity of high-dose methotrexate")

 

 

骨髄障害

・骨髄障害発症時にはただちにMTXを中止し、専門医療機関に紹介する
・頻回に末梢血液検査を行い骨髄の回復を確認する
重症な場合(大球性貧血<8g/dL, WBC<1500, Plt<50000)では活性型葉酸であるロイコボリンレスキューと十分な輸液、支持療法を行う
 

ロイコボリンレスキュー(Leucovorin rescue)

重篤な副作用が発現した場合、MTX投与から24-36時間以内に開始されるべき
 ◦多くの場合では投与スケジュールは以下が推奨
  ‣leucovorin calcium 10mg/m2 IV or 15mg/m2 orally 
  ‣それぞれ6時間後に投与で、血中MTX濃度が0.05-0.1microMになるまで
(Oncologist. 2016 Dec;21(12):1471-1482.)
※ロイコボリン3mg注などあり

輸液と尿のアルカリ化

・MTXの迅速な排泄のために適切な輸液と尿量確保は必須事項
 ◦輸液…2.5-3.5L/m2/日ほども必要
・baselineの尿pHも測定しておくこと
 ◦MTXにより酸性尿になってくる
 →尿pH>7.0に保つことで腎障害発症を抑えられる
 ◦尿のアルカリ化には炭酸水素ナトリウムを使用すること
  ‣これにより輸液も同時に達成できる
・5%ブドウ糖液1000mlに炭酸水素ナトリウム100-150mEqを加えて溶液をつくる
 ◦125-150ml/hrで投与
 ◦おおよそ1/2生理食塩水と同じ濃度(80.5mEq/L)
※炭酸水素ナトリウム注射液7%20ml製剤には60mEq含有
 

間質性肺炎

・MTXを直ちに中止した後、専門医療機関に紹介
 ◦MTX肺炎、呼吸器感染症、RAに伴う肺病変を鑑別
 ◦β-Dグルカン検査
副腎皮質ステロイドの中等量~高用量の投与(経口プレドニゾロン0.5-1mg/kg/day)を行う。
 …重症度に応じてパルスを実施。
 ◦必要に応じてST合剤などの抗菌薬を併用
 ◦必要に応じて真菌性/ウイルス性肺炎に対する治療も開始
 

消化管障害

葉酸や活性型葉酸(ロイコボリン)を併用あるいは増量する
・アフタ性口内炎に対しイルソグラジンマレイン酸塩が有効であることがある
・MTX服用日あるいは翌日のドンペリドン、メトクロプラミドの併用が有用であったという報告あり
 

肝障害

・肝炎ウイルスキャリア/既往感染患者における肝障害
 ◦肝機能障害が発現した場合にはMTX中止の可否も含めてただちに消化器内科専門医にコンサルト
・肝炎ウイルス非感染患者における肝障害 
 ◦AST/ALTが基準値上限の3倍以内…MTX投与量調整あるいは葉酸製剤の開始もしくは増量を考慮
 ◦AST/ALTが基準値上限の3倍以上…MTXを一時中止あるいは減量、葉酸の開始あるいは増量、連日投与を行う
・肝機能が改善しない場合にはその他の原因検索も行うこと
 
 

リンパ増殖性疾患(lymphoproiferative disorders:LPD)

・原因不明の発熱/寝汗/体重減少/リンパ節腫大/肝脾腫/白血球分画の異常/貧血/血小板減少/高LDH血症などを認めた場合に考慮
リンパ節外が原発であることも多い
 ◦皮膚病変(皮下腫瘤)、咽頭扁桃病変(難治性咽頭痛、扁桃腫大など)、軟部組織腫瘤、異常肺陰影の出現などが初発症状になりうる
・LPD疑いの際にはMTXと併用している生物学的製剤や免疫抑制剤を中止
 ◦約半数では薬剤中止で軽快するがそれでもだめならリンパ腫疑いとして生検を考慮

 

まとめ

重篤な副作用が発現した場合の基本的方針はMTX中止
・ロイコボリンレスキューも選択肢としてあり
・十分な輸液と尿アルカリ化を行うこと

 

 

関節リウマチの合併症について詳しい説明を以下でしています。
 
気道、心血管、肺についての合併症