高Ca血症に対する急性期の標準的な治療は、
生理食塩水による脱水補正
ビスフォスフォネート製剤の投与
重症度に合わせてカルシトニン
それでもダメなら透析
となっていると思います。
人によってはフロセミドを使うんでしょうか。
でも、これって根拠あるのでしょうか…?
正直個人的にはほとんど使ったことがありませんが、意外と意見が分かれているということが判明したので過去文献を紐解いてみようと思います。
LeGrand SB, Leskuski D, Zama I. Narrative review: furosemide for hypercalcemia: an unproven yet common practice.
Ann Intern Med. 2008 Aug 19;149(4):259-63.
PMID: 18711156.
・急性期治療として積極的な生理食塩水投与とフロセミド投与は標準的な治療であり続けている※少なくとも2008年時点ではそうだったよう。・高Ca血症の管理におけるフロセミドの使用はもはや推奨されるべきではない
上記のようなイントロから始まっています。
さらに、以下のように続きます。
・1970年以降、フロセミドを使用して尿中へのCa排泄を増加させることができるという報告が発表された・これらによりフロセミド投与による強制利尿が標準治療となった・フロセミド使用前に十分な輸液をすることはよく教科書に書かれているが、あまりこの推奨を守られているようには思えない
著者はちょっとお怒りのようです。
さて、ではこの慣習の根拠となった論文についてみていきます。
・1950年~2007年までに発表された高Ca血症に対するフロセミド投与に関連する論文を特定した・14件の論文が特定され、最新の論文は1983年(!)に出版されたものであった◦フロセミドによる高Ca血症誘発の事例…1例◦症例シリーズの報告…2例◦以前の報告に対するコメント…1例◦総説…1例◦残りの9件のうち、Sukiらによる研究は現在の推奨事項の中で最も多く引用されている参考文献であった(N Engl J Med. 1970 Oct 15;283(16):836-40.)
びっくりしたのは高Ca血症へのフロセミド投与の効果を調べた大規模研究はなく、症例報告ベース、そして最終報告が1983年であったことでした。
このうち、NEJMに掲載されたSukiらによる研究が最も多く引用されている文献のようで以下のように解説されていました。
・37人(のべ39回の治療)の患者への介入で、5つの症例シリーズと4つの単一報告が含まれていた◦成人で使用されたフロセミド投与量は24時間で1120mgほどで、投与量範囲は240-2400mgであった◦39例のうち14例でCa正常化したが、6-12時間以内で改善した症例は2例のみであった◦低用量(40-60mg/day、経口)を使用した唯一の症例では12日後にも正常化を達成できなかった(N Engl J Med. 1970 Oct 15;283(16):836-40.)
常軌を逸したフロセミド投与量にも関わらず、有効性はイマイチ、むしろ合併症を多く誘発してしまう結果になっていたようです。
上記のような結果にも関わらず、ここまで「慣習」として引き継がれてきてしまっていた治療法のようです。
もう二度とフロセミドに手を染めようとは思いませんね…。
フロセミドはfluid overloadがある場合のみに考えられる選択肢で、強制的な利尿を誘発することは有用ではないということになっています。
最後にまとめです。