薬物中毒に関する症例報告がありました。
48歳男性、 ACE-I、サイアザイド系利尿薬、アルコールを大量に摂取して意識障害。
なんかわからんけど、血圧低下と徐脈になってしまったー!
さあ、どうしますか?
※Am J Emerg Med. 2019 Jun;37(6):1217.e1-1217.e2. より
症例提示
・48歳白人男性
・ACE-I、サイアザイド系利尿薬、エタノールを大量に飲み受診
※量は不明
・GCS15、HR77bpm、BP130/90mmHg、SpO2 94%で安定
・身体所見は特に異常を認めず
・血液検査…エタノール濃度3g/L以外には異常なし
この時点では全然大丈夫に見えます。
1時間ほど経過観察をしていたら、HR22の徐脈になってしまいました。
・これに対してはatropineとepinephrineでバイタルが維持された。
・ICU入室となり、人工呼吸器が装着された。
確かに上記対応になってしまうかも。。。
このあと、中毒センターに問い合わせたところ、意外なものの中毒対応法がわかったようです。
答え ACE-I中毒
・中毒センターに問い合わせたところ、ACE-I中毒の可能性を指摘
・naloxone 2mg静注すると、ただちに心拍数と血圧が改善
→バイタルを保つためにnaloxone 0.04mg/kg/hrで持続静注開始
・24時間投与継続、3日後に抜管、6日後にICU退室となった
解説 ACE-I中毒についての概要
・高度な徐脈と低血圧を発症しうる
・積極的な輸液が必要になるような重度の低血圧ではナロキソン投与を考慮
→ペーシングや昇圧薬の必要性を減少させられるかも
・ただし、まだルーチンでの使用を推奨するほどの症例数の蓄積がない
解説 ACE-I中毒の病態生理
・内因性オピオイドは大きく3種類に分類される
◦endorphin
◦enkephalin
◦dynorphin
・このうち、enkephalinは血圧/心拍数/圧受容体反射への直接的な作用を持つ
・ACE-Iはenkephalinの代謝を阻害する→血圧低下、徐脈になる
→naloxoneを投与することで血圧上昇がみられる
まとめ
・ACE-I中毒では徐脈と低血圧が見られうる
・中毒症状に対してはナロキソンが効果的かも