前回に引き続き、リウマチ合併症についてreviewです。
(J Emerg Med. 2018 Nov;55(5):647-658.)
神経学的合併症
環軸椎亜脱臼
・気道の問題に加え、神経学的異常も出現
◦RAでは頸椎が侵されやすく、胸腰椎は比較的保たれる
◦脊髄圧迫→重度の運動障害や感覚障害が誘発される
◦椎骨動脈圧迫/第4脳室からの脳脊髄液流出低下により運動失調、めまい、水頭症など
◦原則的にはあまり症状がでることは少ない
‣多くは頸部運動による(医原性含む)
横断性脊髄炎
・初期は非特異的な症状が出現
◦衰弱
◦背部痛/下肢痛
◦膀胱機能不全
◦感覚/自律神経障害など
→急速に対麻痺に進行する
・臨床的には他のリウマチ性疾患にも発症する前脊髄動脈症候群と区別がつかない
・MRI、造影CTなどが推奨される検査
◦画像検査ができない場合には腰椎穿刺
‣髄液中白血球上昇やタンパク上昇など認められる
◦ビタミン欠乏症やHIVも必要に応じて検索する
・治療は疼痛管理と炎症管理の両面から。
◦疼痛管理…NSAIDs、抗うつ薬、抗けいれん薬など
◦炎症管理…dexamethasoneまたはmethylprednisolone静注。
腎合併症
腎不全
・心臓、肺合併症に続き、RAによる死亡の第3位。
・急性腎炎、横紋筋融解症、腎静脈血栓症などに続発しうる
・血尿やタンパク尿などにより偶発的に見つかることも多い
◦非感染性白血球尿やGFR低下も参考になる
◦RA患者の46-57%に尿検査異常あり
‣ただし、このうちの80%以上の患者でCreは基準値内であった
‣特に、アルブミン尿/蛋白尿はRA患者の死亡率増加と関連がある
→免疫抑制剤による治療を要する可能性があるため、尿検査異常を無視しないこと
これは無視してしまうことが多いような。見逃さないようにしたいです。
消化管合併症
消化管出血
・慢性的な血管炎に続発して消化管出血が起こるのが機序
◦腸管虚血、潰瘍形成、薬物の副作用が原因で起きることもある
・慢性炎症を反映して胆嚢炎、憩室炎、膵炎、腸閉塞なども起こりうる
血管系合併症
抗リン脂質抗体症候群
・まれだが、急速に進行する動静脈血栓症による血管閉塞→多臓器不全が起きる病態
◦初期に腎血管が侵されることが多い
・誘発因子…感染症、悪性腫瘍、外傷、ピルなど
・死亡率はおよそ50%
血液系合併症
Felty症候群
・4徴候…好中球減少症、白血球減少症、脾腫、再発性細菌感染症
・RA患者の1%ほどとまれ、後期合併症
・さまざまなpresentationで受診、感染を見つけて叩くことが重要
T細胞性大顆粒リンパ球性白血病
・Felty症候群と同様の症状
↔RA病初期の合併症で、より緩徐に進行する
汎血球減少症
・RAではよく見られる合併症のひとつ
◦正球性貧血…慢性炎症を反映
◦白血球減少…あまり生じないが薬剤副作用による骨髄抑制として出現しうる
◦血小板減少症…炎症を反映して血小板増多症にもなりうる
リンパ腫
・特にB細胞性リンパ腫がRA合併症として多い
◦疾患そのものと薬剤による副作用の両方が関与している可能性あり
これもたまにみます。
皮膚合併症
皮下結節(リウマトイド結節)
・外部から圧迫されやすい部位に好発する腱、骨膜にできる瘤のようなもの
◦肘、膝、前腕、アキレス腱などに好発
◦胸膜、心膜、腹膜など触れられない部分にも発生する
・RA患者の30-40%に発症、男性に多い
◦疾患病勢の強さとRF陽性と関連している
・良性ではあるが潰瘍化し、指尖部潰瘍、Raynaud syndrome、蜂窩織炎の原因となる
内分泌合併症
副腎不全
・慢性的なステロイド使用者に続発
◦治療自己中断や感染症などのストレス反応
→輸液や昇圧薬に反応性の乏しい低血圧を呈する
・患者は衰弱、筋肉痛、嘔気/嘔吐などで受診しうる
・低血糖+低Na血症+高K血症がkeyになることも。
・治療はhydrocortisoneまたはdexamethasone補充
眼合併症
上強膜炎
・眼の血管系の拡張によるred eye
◦羞明感や視力障害、眼球運動障害はなし
◦軽微な眼球違和感程度の症状
二次性シェーグレン症候群
・RA患者の10%程度に出現
・角結膜や口腔内の乾燥症が認められる
眼部帯状疱疹
・RA患者で視力障害やそのほかの眼の症状を訴える場合には必ず考慮すること
・播種性帯状疱疹も起きうる
筋骨格系合併症
化膿性関節炎
・RAと症状が類似しているため、初期には見落とされることがしばしば
◦診断の遅延は1-3週間程度
→不可逆的な関節破壊を来す、死亡率は30%程度に跳ね上がる
・Staphylococcus aureusが原因として最多
・滑液中乳酸値が化膿性関節炎 vs 非感染性関節炎の鑑別に使えるとの報告もあり
◦>10mmol/Lでは陽性尤度比10を超える
・第3世代セフェム+バンコマイシンで治療開始すべし
以上です!
合併症多すぎる!こりゃだめだ。次回まとめます。
気道、心血管、肺についての合併症は以下をみてください!