りんごの街の救急医

青森県弘前市の救急科専門医による日々の学習のまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。

関節リウマチの合併症①

関節リウマチ患者、当院では増えてきています。

そもそもの有病者数がそれなりに多いのと、当院にはリウマチ専門医もいるからでしょう。

 

治療については実際に携わることはありませんが、関節リウマチ治療中の患者が急性疾患を合併してERを受診することはよくあります!

 

今回は「リウマチ患者の合併症」をレビューしておきたいと思います!

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( J Emerg Med. 2018 Nov;55(5):647-658. )

 

 

 

 

気道に関する合併症

環軸椎亜脱臼(神経学的合併症としても重要)

・RA患者の10-55%に認められる
・前方脱臼が多いが、垂直脱臼の際には致死的になる
頸動脈圧迫による呼吸停止を来しうる
・以下の症状が出現した場合に疑うこと
 ◦新規発症の後頭部~後頚部痛
 ◦四肢感覚異常
 ◦上肢筋力低下
 ◦めまい
 ◦脊髄症状…頸部屈曲時の電撃痛、膀胱直腸障害、四肢麻痺など
・診断はCTまたはMRI
※症状がなくとも発症していることがあるためRA患者では頸部屈曲/伸展を避けること
 →気道管理の際には直視下での気管挿管よりビデオ喉頭鏡が好まれる傾向にある
 

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(Spine J. 2014 Jun 1;14(6):938-43.)
 
Epley法などはやってはいけません!こわいこわい。。。
 

輪状披裂関節炎(cricoartenoid arthritis)

・RA患者の最大30%程度に発症
・上気道閉塞に進展する恐れがある
・以下の症状が出現した時に疑う
 ◦嗄声
 ◦stridor/wheeze
 ◦異物感、咽頭痛(耳や頸部への放散痛ありうる)
気管軟骨に圧痛がある
・診断はCTまたはファイバー喉頭
 ◦浮腫
 ◦声帯運動の低下
 ◦上気道閉塞
 ◦披裂軟骨の非対称性
・気道緊急時には輪状甲状靭帯切開を要する
 ◦救急外来で高用量ステロイド(methylprednisolone 250-500mg 静注)は考慮

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左: 披裂軟骨と輪状軟骨の濃度上昇(Am J Otolaryngol. 2012 Nov-Dec;33(6):753-5.)

右:正常像

気管軟化症

・気道閉塞の原因になりうる
 ◦広範な炎症→気管気管支軟骨の崩壊→気道閉塞
・治療はステント留置か病変部位切除
・ERではNPPVも選択肢に入り、もしかしたら気管挿管を免れる可能性もある
 ◦挿管が必要になった場合には通常より細径でトライすること

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顎関節炎

・十分な鎮静や筋弛緩によっても開口障害が出うる
・気道緊急の際に問題になるため注意
 

心血管系に関する合併症

冠動脈疾患

RA患者の死因で最も多い
 ◦RAという疾患自体による炎症+薬剤(ステロイドなど)の影響で動脈硬化が進行
 ◦糖尿病、脂質異常症、高血圧などがコントロールされていても発症率は一般人より3倍高い
 

心筋症

・RA患者では心筋症による心不全も高頻度に認められる 
 ◦RA陰性患者に比較してHFpEF/HFrEFは2倍多い
・救急外来では以下の心膜炎の可能性もあるためbedside echoも活用すべし
・通常の心不全治療に加え、免疫抑制療法や高用量ステロイド治療が適応になる

心膜炎

・RA患者の約10%に発症
心タンポナーデに至ることはめったにない

弁膜症と不整脈

・MRが最多で、これによりAF発症リスクが40%上昇
・薬物などの影響もあり、RA罹患歴>5年ではQTc延長やPVCが有意に多くなる

肺に関する合併症

間質性肺炎

・RAが死亡する主要な原因のひとつ、予後不良
間質性肺炎→肺高血圧症→右心不全となることが多い
 ◦症状はしばしば軽微、乾性咳嗽や労作時呼吸困難など
 ◦診断は胸部CTと肺機能検査
・急性期にはmethylprednisolone 1 mg/kg/day 3日間に続き、症状改善まで1 mg/kg/day 経口投与を続けることが推奨
・リウマトレックスの副作用としても起こる。

 

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大したことない症状で受診されても念のためレントゲン撮るとびっくりすることがあります。関節リウマチ+咳は特に要注意です。

 

胸膜炎

呼吸困難、胸膜痛、胸水貯留や胸膜摩擦音で疑う
・胸水貯留はあるが、多くは少量で無症候性
 ◦症状を自覚するのは3-5%程度と少ない
 ◦典型的には片側性だが、両側性に認められることもある
・治療はRAの病勢コントロールが主体だが、大量胸水の場合には胸腔穿刺など要する

肺胞出血

・肺血管炎に続発して喀血が出現する
・初期の気管支鏡検査が推奨される
 ◦気道緊急の場合には気道確保を要する
 ◦methylprednisolone 最大500mg 6時間ごと点滴静注が治療
 ◦根治的治療まではトラネキサム酸投与でつなぐことも可能
  ‣噴霧形態の薬剤があればよいが、経口でも静注でも効果は報告されてきている

肺炎

免疫抑制剤ステロイド、DMARDsにより免疫低下→感染が起きる
・通常の細菌性肺炎の起因菌に加え、以下の微生物についても考慮が必要
 結核
 ◦レジオネラ
 ◦Pneumocystis jiroveci

 

 とても長いのでここでいったん区切ります。
まだまだあります!神経、腎、消化管、血液、皮膚、内分泌、眼、筋骨格系は次回にします。リウマチって大変な病気ですね。。。