健常人では、安静時には心拍数は60-100bpmほどで保たれていますが、酸素需要によって変動があることが知られています。
心拍数を増やすことは心拍出量を増加させる最短の方法であり、これにより臓器への酸素供給が改善します。
これまでの研究から、高体温は心拍数に影響を与える因子として知られていました。
よって、体温と心拍数の関係を理解することで、その頻拍の原因を鑑別することの助けになるかもしれません。つまり、体温による影響か、他の因子による影響か(脱水/心不全/不安/疼痛などのストレスなど)を鑑別するのに役立つ可能性があります。
ご存知の通り、これまでの研究では体温が1度上昇するごとに心拍数が5.5-10bpmほど上昇することが報告されていましたが、これらの研究は小児を含んでいたり健常人の小規模研究であったりで、critically ill patientsを含んだデータはあまりありませんでした。
そこで、重症患者に絞って体温と心拍数の関係性を見たのが今回の研究になります。
Broman ME, et al. The Relationship Between Heart Rate and Body Temperature in Critically Ill Patients.
Crit Care Med. 2021 Mar 1;49(3):e327-e331.
PMID: 33566464.
・心拍数はモニター/心電図より記録され、体温は(鼓膜温もあるが)大部分が侵襲的なカテーテルによって測定され記録されたもの(深部体温)
・9046人が対象となり、472941回の記録がされた
・回帰分析によると、32度~42度の範囲では体温が1度上昇するごとに心拍数は男性:7.24bpm, 女性:9.46bpm上昇した
※濃い色の方が男性
・この関係性は、年齢/Hb/Mg濃度/base excess/カテコラミン投与などの影響は受けず
・SOFA scoreが1点増加するごとに心拍数は0.68bpm増加
ICUにおける大規模研究であるところに強みがあります。これまでの研究は健常人や小児を対象とするものが多かったですが、本研究は重症患者1本に絞っているところに新規性があります。
測定された体温は侵襲的手段がほとんどでしたが、鼓膜温も2%ほど含まれていました。これはあまりデータに影響を与えるものではないかもしれません。
ICUという多数の薬剤が使用されている状況のため、多因子が影響を与えている可能性はありますが、ある程度の指標にはなりそうです。 体温と心拍数の関連を評価することで(補正することで)、現行治療が奏功しているかどうかを評価することもできるかもしれません。
体温と心拍数の関係性には性差があるようです。男性の方が上がりやすいんですね。
どう覚えればいいでしょうか。男性(Male)は7/女性(Female)は9くらいなので、「マルモのおきて」(まなふく)みたいに覚えておけばいいかも。
こういうの考える才能ないな~。
まとめ
・体温と心拍数の関係性は、重症患者においては体温が1度上昇するごとに心拍数は男性: 7.24bpm, 女性: 9.46bpm増加する
・体温と心拍数の関係のおきては「マルモのおきて」