りんごの街の救急医

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case137:ウエイトリフティング後に霧視と飛蚊症を発症した30歳男性(Ann Emerg Med. 2021 Feb;77(2):269-283.)

 

症例

・30歳男性
4日前にウエイトリフティングをした際に左目の霧視と飛蚊症を自覚
視力…正常/0.5
左目の下方の視野欠損を認めた
・ベッドサイドで眼球超音波を実施

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ポイントは「息こらえ後に発症した視力障害」です。

 

 

診断

Valsalva網膜症

・1週間後の眼底検査フォローで出血の消失が確認された
・2か月後には視力が大幅に改善したことが確認された

 

 

Valsalva網膜症は、胸腔内圧上昇により静脈血圧上昇→急激な眼球内静脈圧上昇が起こり、網膜内層の出血性剥離が起こることで発症する
(Trans Am Ophthalmol Soc. 1972;70:298-313./J Med Case Rep. 2012 Oct 10;6:346.)
 
・出血は網膜内であり、硝子体出血や網膜剥離とは異なる
 
・治療は以下の対症療法
 ◦息こらえをしないこと…緩下剤処方、激しい運動を避けることなど
 ◦抗凝固薬投与を避ける
 
・多くの患者は数週間から数か月以内に自然に改善して完全な視力回復が得られる
(Can J Ophthalmol. 2004 Dec;39(7):761-6./ Valsalva Retinopathy - StatPearls - NCBI Bookshelf (nih.gov)
 
 

まとめ

・息こらえ後の視力低下ではValsalva網膜症を考えよ