病歴/身体所見
・11歳女性
・急性発症の左側腹部～下腹部にかけての疼痛のためER受診
・嘔気/嘔吐/発熱を呈していた
・右卵巣捻転の既往あり
検査
・POCUS（point-of-care ultrasound）が実施された
◦左卵巣が腫大し、内部は不均一であった
◦静脈血流はかろうじてあるが、動脈血流はなし
診断
卵巣捻転
・緊急外科的介入がされ左卵巣は温存された
・卵巣捻転は、卵巣とそのホルモン機能を温存するためにタイムリーな診断と迅速な外科的介入を要する疾患である
・卵巣捻転診断のgold standardは超音波検査
◦動脈血流がないことと卵巣腫大があると捻転を示唆
◦ただし、いずれの所見がなかったとしても除外はできない
‣卵巣は卵巣動脈と子宮動脈から血流を得ている
‣間欠的な捻転の可能性もある
（Pediatr Radiol. 2007 May;37(5):446-51./J Obstet Gynaecol Can. 2018 Jul;40(7):871-875.）
・小児文献では、卵巣捻転診断において卵巣腫大は感度92％/特異度96％
（Ma and Mateer’s Emergency Ultrasound. 3rd ed.）
・動脈血流および静脈血流の欠如は感度76-94％/特異度99-100％
◦成人のみのデータでは成人に関しては感度70-84％/特異度87-100％
（Ultraschall Med. 2020 Dec;41(6):688-694./J Clin Ultrasound. 2009 Oct;37(8):436-9./J Obstet Gynaecol Can. 2018 Jul;40(7):871-875./Ultraschall Med. 2020 Dec;41(6):688-694.）
・meta-analysisでは、B-modeが感度92％/特異度96％であり、Dopplerでは感度が低いが特異度が高いことが報告されている
◦両方を組み合わせて検索することで診断能があがる
（Eur J Pediatr Surg. 2015 Feb;25(1):82-6.）
・超音波検査は有用だが所見が出ず、疑いが強い場合には外科的検索も要する
卵巣捻転はしばしば診断が難しくなります。
いかなる年齢層でも、いかなる卵巣サイズでも、超音波で血流があろうとも捻転していることがあります。
強い疑いの目をもたないと見逃します。
まとめ
・卵巣捻転診断のgold standardは超音波検査であり、動脈血流がなく卵巣腫大があると捻転を示唆するが、いずれの所見がなかったとしても除外はできないことに注意を要する
