病歴/身体所見
・3歳女児
・増悪する皮疹のため受診
◦受診3日前から経時的に増悪する皮疹と四肢の腫脹が出現
◦受診2日前から38度を超える発熱が出現
・当初は掻痒感を伴う両手の腫脹だけだったが、受診時にはドーム型の斑状丘疹状発疹が出現し急速に進行して手~肘付近まで拡大していた
・下肢と臀部にも複数の紅斑性丘疹があり、臀部と足関節部に水疱を認めた
・口唇にも痂皮を伴う水疱を数個認めた
・受診2週間前に乾性咳嗽と倦怠感、37度台の微熱を認めていたことがわかった
◦これに対して薬剤処方はされていなかった
・受診から4日後、同心円状の標的病変を呈するようになった
検査
・血液検査…特記すべき異常なし
・Mycoplasma pneumoniae IgM陽性
診断
Mycoplasma pneumoniaeによる多形紅斑
・局所ステロイドと経口アジスロマイシンが投与された
・受診4日目から四肢の腫脹/発疹の増加/発熱の持続のため経口ステロイドが6日間投与された
・2週間後、発熱や倦怠感、発疹は完全に消失していることを確認された
◦抗菌薬(penicillins, cephalosporinsなど)…14%
◦HSV…18%(成人では42%)
◦Mycoplasma pneumoniae…16%
・その他の原因として、EBV/cytomegalovirus/ワクチン/自己免疫性疾患などがある
・診断は特徴的な標的病変により臨床的になされる
・Mycoplasma pneumoniaeによる多形紅斑では、粘膜病変や、扁平または斑状丘疹や水疱形成などのさまざまな皮疹を合併することがある
(J Cutan Med Surg. 2016 Sep;20(5):453-7.)
・多形紅斑に対する経口ステロイド投与は議論が残る分野
◦全ての研究で利益が示されているわけではない
◦特に小児の軽症多形紅斑では、成長の観点から通常は避けられる
(Can Fam Physician. 2013 Jun;59(6):635-6./J Dermatol. 2015 Aug;42(8):768-77.)
小児の多形紅斑といえばマイコプラズマというイメージがあります。
COVID19対策のためか、小児の感染症はぐっと少なくなった印象があります。
それによってこういった皮疹もあまり見かけなくなったように思いますがどうなんでしょう。
まとめ
・小児の斑状丘疹状発疹/水疱/標的病変/気道感染症では、Mycoplasma pneumoniae感染を考慮すること