病歴/身体所見
・32歳男性
・3年前に虫垂切除術既往あり
・2年前にstump appendicitisに対し残存虫垂切除術既往あり
・2日間持続する右下腹部痛と嘔吐のためER受診
・McBurney点に手術痕を認める
・腸蠕動音は低下、右下腹部に圧痛と筋性防御と反跳痛を認めた
・体温37.1度
検査
・超音波:浮腫状の腸管およびその周囲の炎症所見を認めた
・造影CT:盲腸から続く、長さ2.5cmほどの肥厚した盲端のある腸管、炎症性変化、周囲リンパ節腫脹、限局性腹水を認めた
診断
再発性stump appendicitis
・手術により切除され、病理所見から上記が支持された
・stump appendicitisは虫垂炎術後のまれな合併症のひとつ
◦虫垂切除後、虫垂残存部に発症する炎症を指す
◦発症年齢:11-72歳、虫垂切除後2か月~50年で発症
‣どの年齢層でも、術後いつでも発症しうる
◦虫垂切除術後症例50000例に対して1例の割合で発症する
(Clin Pract Cases Emerg Med. 2018 May 18;2(3):211-214./Am Surg. 2018 Dec 1;84(12):e519-e521./Cases J. 2009 Jul 9;2:7415./Tech Coloproctol. 2009 Mar;13(1):73-4./Cases J. 2010 Jan 9;3:14.)
・近年、発症率が増加傾向にある
◦腹腔鏡手術の影響かもしれない
(World J Gastroenterol. 2006 Sep 7;12(33):5401-3.)
・手術の際に、5mm以上の虫垂が残るとそこに糞石が貯留し、stump appendicitisの原因となりうる
(Tech Coloproctol. 2003 Jul;7(2):102-4.)
・身体所見や臨床検査で虫垂炎と同様の所見を示すが、虫垂切除既往があることから診断が遅れる原因となる
◦早期診断がされないと穿孔や腹膜炎、小腸閉塞、後盲腸膿瘍などへと発展しうる
(Am Surg. 2018 Dec 1;84(12):e519-e521./Tech Coloproctol. 2003 Jul;7(2):102-4./Am Surg. 2018 Dec 1;84(12):e519-e521./Can J Surg. 2004 Jun;47(3):217-8.)
・手術療法は正常な解剖学的構造が保たれていないため、通常の虫垂炎よりも難易度が高い
画像はふわーっとみていると憩室炎みたいですね。
虫垂切除後にstump appendicitisになって切除されているため、さらにstump appendicitisを疑うか…が決め手でしょうか。
まとめ
・stump appendicitisは、虫垂切除後のまれな合併症であり、どの年齢層でも術後どの段階でも発症する可能性がある
・虫垂切除後でも右下腹部痛の鑑別にstump appendicitisをあげること
・診断の遅れが起きやすく、合併症が増えるため要注意