病歴/身体所見
・50歳男性
・既往歴なし
・数時間持続する左側腹部痛と血尿のためER受診
・受診までに1回嘔吐した
・腎結石/高血圧/腹部手術歴/最近の外傷歴/発熱/
排尿障害/精巣痛/陰茎分泌物などなし
・BP196/94mmHg, HR50bpm, RR18, BT36.0℃
・左側腹部に圧痛を認めた
検査
・尿管結石が最も疑われ、CTをオーダーした
◦左腎腫瘍と被膜下血腫を認めた
・造影CTでは活動性出血はなかったが、左腎下極の造影不良域/造影剤排出遅延あり
診断
腎被膜下血腫によるPage kidney
・血圧と疼痛管理のために泌尿器科に入院となった
・再出血の可能性を考慮して手術やIVRは選択しなかった
・血圧はcaptopril, amlodipine, chlorthalidoneによりコントロール
・泌尿器科フォローとして退院となった
・Page kidneyは、腎実質の圧迫に伴い二次性高血圧を発症するまれな病態である
◦1939年、Dr.Pageは動物の腎臓をセロハンで包む実験を通じて、腎実質の圧迫が二次性高血圧の原因となることを証明した
◦セロハンは腎周囲に線維膠原性外皮を形成し腎虚血を引き起こしていた
(Science. 1939 Mar 24;89(2308):273-4.)
・他の研究でも、腎虚血がRAA系のupregulationを起こし、"Goldblatt型高血圧"の原因となることが示された
◦片側/両側に関わらず重度の高血圧が発生した
(J Exp Med. 1934 Feb 28;59(3):347-79./Urol Int. 1991;46(2):203-7.)
・Page kidneyの原因としては以下がある
◦腎被膜下血腫…外傷が最多
◦移植
◦生検/周術期合併症
◦抗凝固療法
◦硬膜外麻酔
◦膵炎
◦腫瘍/嚢胞
(Am J Kidney Dis. 2009 Aug;54(2):334-9.)
・Page kidneyの初期治療は、ACE-I/ARB/aldosterone receptor antagonistなどによる保存的加療
◦その他の降圧薬と組み合わせて使用することができる
・薬剤による降圧が困難であれば腎摘出術を含めた外科的介入を考慮する
(Am J Kidney Dis. 1991 Nov;18(5):593-9.)
側腹部痛の多くは尿管結石だと思いますが、
まとめ
・腎疝痛+高血圧で受診した症例では、Page Kidneyによる二次性高血圧を鑑別に挙げるべし