病歴/身体所見
・82歳男性
・失神のためERへ救急搬入された
・特に既往はなかった
・大酒家でheavy smokerであった
・全身倦怠感、めまい、下痢、左下腹部に腫瘍および疼痛があると話す
◦左下腹部の腫瘍はいつからあったかわからないという
検査
・血液検査:鉄欠乏性貧血、CRP上昇
・CT:左下腹部に9cm*7cmの膿瘍を認め、腹壁と胃大弯に瘻孔を形成していた
巨大な膿瘍(*)が腹壁(白矢印)や胃大弯(白矢頭)まで広がっている
診断
大腸癌の腹壁/胃への穿破、膿瘍形成
・大腸内視鏡にて左側結腸腫瘍を認め、生検で中分化腺癌の診断となった
・遠隔転移は認めなかった
・結腸亜全摘、胃切除術、左側肝切除術、左側横隔膜切除術を受けた
・手術自体は成功したが、術後6日で突然死亡した
・剖検でも死因は明らかにすることができなかった
・大腸がんは世界で女性では2番目/男性では3番目に多い悪性腫瘍
・大腸癌の最大2%で前腹壁病変を発症し、膿瘍形成に至ることがある
◦特に高齢者に多く、化膿性分泌物や発熱/体重減少などがみられる
(Surgery. 1950 Oct;28(4):662-71./Am J Surg. 1976 Mar;131(3):270-4.)
・CTによって診断が疑われ、手術所見や生検により確定診断される
たまにコレ、ER受診します。
大体、高齢独居男性で土曜日の受診が多いように思います(私見)。
遠方に住む家族に、動けなくなっているところを発見されて救急搬入…というのをこれまで何度も経験しています。いつも平日の方が体制いいのになぁ~なんて考えてしまいます。
まとめ
・大腸癌は腹壁へ穿破し、膿瘍形成することがある
・腹壁の化膿性病変を見たら、腹腔内病変との関連を疑うこと