病歴/身体所見
・12歳男性
・既往歴なし、手術歴なし
・2日前からの右下腹部痛/嘔気/嘔吐のためER受診
◦発熱はなかった
・McBurney点に圧痛あり、Rovsing's sign陽性
検査
・血液検査…WBC6000, CRP<0.2
・腹部超音波…糞石を伴う4mmほどの虫垂を認めた
虫垂は4mmほど、腫大していない
虫垂結石(糞石)を認める
・CT…虫垂炎の所見はなく、糞石のみであった
・上記評価後帰宅となったが、翌日も疼痛があるとしてER再受診
・6年前にも同様の痛みを自覚したことがあると申告
診断
虫垂結石性疝痛
・虫垂結石性疝痛は、虫垂内の石灰化した糞便で部分的な管腔閉塞が起き、それによって再発性の蠕動痛や圧痛が引き起こされる症候群
・臨床的には虫垂炎と区別が難しいが、発熱や炎症マーカー上昇がないことは鑑別の1つの手段
(Eur J Pediatr Surg. 2004 Feb;14(1):21-4.)
・虫垂結石の存在は虫垂炎の穿孔との関連性が高い
(World J Pediatr. 2018 Apr;14(2):184-190.)
・右下腹部痛を訴えている患者における虫垂結石の存在は、しばしば虫垂炎の前兆である可能性が懸念されるが…
◦虫垂結石を3-5年追跡した研究では、虫垂炎発症率は0-5.8%
(Eur J Pediatr Surg. 2004 Feb;14(1):21-4./J Pediatr Surg. 2010 Dec;45(12):2377-80./J Surg Res. 2018 Jan;221:84-87.)
・虫垂結石性疝痛の患者はしばしば多数のERを受診し何度も画像検査をされる傾向にある
(Eur J Pediatr Surg. 2004 Feb;14(1):21-4.)
・疼痛コントロール目的で選択的虫垂切除術を受けることがある
(Eur J Pediatr Surg. 2004 Feb;14(1):21-4.)
確かに臨床的にこのようなことはしばしば経験します。
糞石だけはあるけど虫垂炎の所見はないな~、他に腹痛の原因になりそうな疾患はないな~という場合にはこの診断になるのでしょう。
まとめ
・虫垂結石(糞石)により部分的な虫垂閉塞が起き、再発性の蠕動痛や圧痛が引き起こされることがある(虫垂結石性疝痛)