病歴/身体所見
・61歳女性
・数日間持続する右季肋部痛のためER受診
・受診18日前に急性胆嚢炎に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術が実施されている
・バイタルサイン:HR110bpm
・腹部触診で、右季肋部に中等度の圧痛を認める
検査
・造影CT:辺縁造影効果を伴う7.3*5.7*7.7cmのair-fluid levelのある水濃度の腫瘤あり
診断
胆嚢窩膿瘍
・PIPC/TAZと輸液を投与され入院となった
・IVR実施:ドレーン留置して100mlの膿瘍を排出
・第3病日に退院となった
・急性胆嚢炎に対して、腹腔鏡下胆嚢摘出術が選択されることが一般的になっている
・合併症として、胆管損傷/胆管狭窄/腸管損傷/出血/感染症/胆石脱落などがある
(HPB (Oxford). 2003;5(3):152-8./Am J Surg. 1993 Jan;165(1):9-14.)
・特に糖尿病などの免疫不全がある場合には感染症はより多い合併症
(World J Surg. 2013 Oct;37(10):2257-64.)
・胆嚢摘出術後の腹痛を呈する患者を見たら、上記合併症を考慮してCTや超音波などの画像検査を行うこと
・胆摘後数日~数週間で敗血症の徴候があれば、術創感染や膿瘍形成を考慮して対応すること
・胆嚢窩膿瘍の治療は外科的ドレナージまたはドレーン留置が適応になる
(Langenbecks Arch Surg. 2004 Jun;389(3):164-71.)
もともと胆嚢があった肝臓のスペースのことを胆嚢窩といいますが、
術後にそこに膿瘍形成してしまった症例でした。
まとめ
・胆摘後数日~数週間かつ敗血症の徴候があれば、術創感染や膿瘍形成を疑う
・糖尿病などの免疫不全があればより合併が多くなる
・胆摘後合併症として胆管損傷/胆管狭窄/腸管損傷/出血/感染症/胆石脱落などがある