病歴/身体所見
・63歳女性
・咳嗽/頸部腫脹/嚥下困難のためER受診
・心房細動に対してwarfarinが処方されている
・バイタルサインの異常はなし、呼吸困難の訴えなし
・嗄声および前頸部に斑状出血を認めた
・舌下血腫を認めた
検査
・CTにより後咽頭間隙に広がる血腫を認めた
・血液検査:PT-INR>10
診断
上気道血腫
・気道緊急のため麻酔科および耳鼻咽喉科がコールされた
→保存的治療の方針となった
・Vitamin K10mgとPCC3000単位、dexamethasone 10mgが投与された
・ICUに入室したが気道緊急を起こすことなく6日後に退院した
・上気道血腫はwarfarinなどの抗凝固薬によるまれな合併症
・上気道血腫は致命的となる可能性があり、激しい咳き込みなどが誘因となり発症する
(N Am J Med Sci. 2015 Nov;7(11):494-502.)
(N Am J Med Sci. 2015 Nov;7(11):494-502.)
・治療方法については議論が続いている
◦気道緊急が疑われる場合には麻酔科と耳鼻科によるタイムリーな気道確保を要することがある
◦軽症の場合には保存的加療が奏功することもある
(N Am J Med Sci. 2015 Nov;7(11):494-502./Ear Nose Throat J. 2008 Mar;87(3):156-9.)
(N Am J Med Sci. 2015 Nov;7(11):494-502./J Emerg Med. 2003 May;24(4):389-94.)
(Circulation. 2013 Jul 23;128(4):360-4.)
・推奨されるPCC doseは以下
◦PT-INR>1.5…4単位/kg
◦PT-INR>6…50単位/kg
(N Am J Med Sci. 2015 Nov;7(11):494-502.)
DOAC内服中の出血イベントでは以下のチャートに従うと良いです。
(Crit Care Res Pract. 2018 Jul 4;2018:4907164. )
・ダビガトラン(プラザキサ)内服…イダルシズマブ(プリズバインド)投与
・それ以外のDOACやワルファリン…PCC(ケイセントラ)投与
※当院では採用なしのため近隣の大病院に依頼
・FFP推奨されず、ケイツーも遅すぎ(とはいえ上記入手できなければ投与考慮)
・DOAC内服から2時間以内なら活性炭投与
まとめ
・上気道血腫はwarfarinやDOACによる致命的合併症である
・治療方法には議論がある分野だが、気道緊急が疑われれば気道確保を要し、軽症であるならば保存的加療も可能
・リバースにはPCCが最適。なければVitamin K+FFPも考慮