りんごの街の救急医

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症例45:warfarin内服中に頸部痛と嚥下時痛を発症した63歳女性(Clin Pract Cases Emerg Med. 2020 Nov;4(4):634-635.)

病歴/身体所見

・63歳女性
咳嗽/頸部腫脹/嚥下困難のためER受診
・心房細動に対してwarfarinが処方されている
・バイタルサインの異常はなし、呼吸困難の訴えなし
嗄声および前頸部に斑状出血を認めた

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舌下血腫を認めた

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検査

・CTにより咽頭間隙に広がる血腫を認めた

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血液検査:PT-INR>10

 
 
 

診断

上気道血腫

・気道緊急のため麻酔科および耳鼻咽喉科がコールされた

→保存的治療の方針となった

・Vitamin K10mgとPCC3000単位、dexamethasone 10mgが投与された
ICUに入室したが気道緊急を起こすことなく6日後に退院した
 
 
上気道血腫warfarinなどの抗凝固薬によるまれな合併症
 
・上気道血腫は致命的となる可能性があり、激しい咳き込みなどが誘因となり発症する
(N Am J Med Sci. 2015 Nov;7(11):494-502.)
 
・症状として、嚥下障害/咽頭痛/頸部腫脹/斑状出血/嗄声などがある
(N Am J Med Sci. 2015 Nov;7(11):494-502.)
 
・治療方法については議論が続いている
 ◦気道緊急が疑われる場合には麻酔科と耳鼻科によるタイムリーな気道確保を要することがある
 ◦軽症の場合には保存的加療が奏功することもある
(N Am J Med Sci. 2015 Nov;7(11):494-502./Ear Nose Throat J. 2008 Mar;87(3):156-9.)
 
・保存的加療にはVitamin K/FFP/PCCなどを組み合わせて投与してICUで経過観察を行う
(N Am J Med Sci. 2015 Nov;7(11):494-502./J Emerg Med. 2003 May;24(4):389-94.)
 
・warfarin誘発性凝固障害ではPCCはFFPと比較してより速い凝固機能異常の改善/RBC輸血減少/合併症減少と関連
(Circulation. 2013 Jul 23;128(4):360-4.)
 
・推奨されるPCC doseは以下
 ◦PT-INR>1.5…4単位/kg
 ◦PT-INR>6…50単位/kg
(N Am J Med Sci. 2015 Nov;7(11):494-502.)
 
 
DOAC内服中の出血イベントでは以下のチャートに従うと良いです。

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(Crit Care Res Pract. 2018 Jul 4;2018:4907164. )
・ダビガトラン(プラザキサ)内服…イダルシズマブ(プリズバインド)投与
・それ以外のDOACやワルファリン…PCC(ケイセントラ)投与
※当院では採用なしのため近隣の大病院に依頼
FFP推奨されず、ケイツーも遅すぎ(とはいえ上記入手できなければ投与考慮)
・DOAC内服から2時間以内なら活性炭投与
 
 

まとめ

・上気道血腫はwarfarinやDOACによる致命的合併症である

・治療方法には議論がある分野だが、気道緊急が疑われれば気道確保を要し、軽症であるならば保存的加療も可能

・リバースにはPCCが最適。なければVitamin K+FFPも考慮