家庭用品のアルカリ性物質と言えば、
ハイター、パイプユニッシュ、カビキラーなどがあります。
これらを意図的に(自殺企図、友人に勧められて!?)、もしくは非意図的に摂取してしまいERを受診することがあります。
どうしたらいいかわかりませんよね!?
フローチャートとともに初期対応を見ていきましょう。
対応のフローチャート
そのときの対応方法は以下のチャートのとおり!
「酸かアルカリか」、「意図的か否か」、「症状の有無」で対応が異なります。
(N Engl J Med. 2020;382(18):1739-1748.)
※全例で気道が保たれていることを最初に確認すること
※内視鏡がすぐにできないが重度の損傷が強く疑われる場合には、造影CTを行うこと
※Usta protocolは以下を指します
・methylprednisolone(1g/1.73m2BSA/day 3日間)
・ranitidine(小児は4mg/kg/day)
・ceftriaxone(小児は100mg/kg/day)
ABCDEの確保はいつも通りに!
中毒診療の基本もいつもと変わらずABCDEの確保!
この原則はいつでも変わりません。
特に腐食性物質誤飲では気道確保を要することがあります。
嗄声、呼吸困難など気道に関連する症状があれば早めの気道確保を考えましょう。
そして、アルカリ性物質誤飲の場合には特別な配慮が必要になります。
①消化管
②眼球や皮膚などの損傷 です。
①消化管についてはこれから説明しますが、
ABCDEで言えば、E:esophagusが重要です。
②眼球や皮膚などの損傷 は忘れがちです。
吐物がついた手で目をこすったり、吐物が付着した服を脱がせずにおくと余計な損傷が増えてしまいます。
酸とアルカリの違い
酸とアルカリがありますが、どっちがやっかいかと言えばアルカリのように思います。
アルカリは脂肪を鹸化することにより組織に深い損傷を与えていきます。
酸は凝固壊死によりタンパク質を変性させますが、凝固することで酸がより深い組織に到達することを防ぐために、損傷は制限されると考えられています。
あの有名な「臨床中毒学 第2版」には、「酸は食道を軽くひとなめして胃の幽門部にかじりつくが、アルカリは食道にかじりつく」と記載があります。
そうです、食道損傷の有無が問題になります。
また、それと隣接する臓器の損傷が問題になることもあるので、閾値は低く造影CTでの検索はしておいてよいと考えています。
上部消化管内視鏡検査をすべき症例
なんらかの症状がある場合(嘔吐、流涎、嚥下困難など)、または意図的な摂取があった場合には上部消化管内視鏡検査に進むべきです。
組織軟化により穿孔リスクが増大する可能性があるため、誤飲から24-48時間以内に施行を検討するとよいでしょう。
外来フォローで帰してよい/帰してはいけない患者
内視鏡実施基準を満たさない非意図的摂取の場合、内視鏡所見が陰性の場合には、飲水が可能であれば帰宅可能ではあります。
ただし、意図的な誤飲をした場合や内視鏡で陽性所見がある場合には、最低24時間の入院(そして精神科的な評価)が必要になります。
さらに詳しくは以下の記事を参考にしてください!
腐食性(酸/アルカリ)物質誤飲(N Engl J Med. 2020 Apr 30;382(18):1739-1748.) - りんごの街の救急医