所属施設を変えてから1か月経ちました。
ER業務で日々研修医や専攻医らと奮闘していますが、その様子を少しでもみなさんと共有したい…!
そこで、"Real ER Round"と称して、簡単に振り返ったことをまとめていきたいと思います。
診療のスキマ時間の数分で振り返ったことをまとめています。
網羅的ではないかもしれませんが、数分で読み切れるライトな記事にしていきたいと思います!
是非、「りんごの街の救急医~新章~」にご期待ください。
急性心膜炎
ぶっちゃけ、救急外来では診断できずともよい疾患です。
鑑別診断であるKiller chest painの面々を見逃さないことの方がはるかに重要です!
でも、STEMIを模倣するSTEMImicsとして有名なので知っておいてもいいと思います。
簡単な診断基準の確認
診断基準を確認しておきます。
以下の4項目のうち、2項目以上を満たす場合に診断されます。
(JAMAの総説より)
(1) 病歴
鋭い、胸膜痛、仰臥位で増悪する胸痛(~90%)
(2) 身体所見
心膜摩擦音:前かがみになったときに聴取しやすい(< 30%)
(3) 心エコー所見
新規または増悪する心嚢液:心臓周囲脂肪との鑑別が重要
(4) 心電図所見
広範囲な誘導に見られるPR低下を伴うST上昇(25-50%)
(JAMA . 2024 Oct 1;332(13):1090-1100.)
もうちょっと心電図所見にFocus
今回、Learning Pointとして強調しておきたいのは心電図所見です。
上記JAMAの総説で紹介されている急性心膜炎の心電図所見は有名な割に感度が低めです。
心電図所見として、以下の特徴的な所見があることも知っておくといいでしょう。
・広範囲な誘導でPR低下を伴うST上昇
・aVR誘導におけるPR上昇を伴うST低下
※心膜炎では、aVR誘導以外にはST低下は起こらない!(たとえばaVL誘導でSTが低下していたら、それはたぶん心膜炎ではない!)
・V6誘導のST/T比≧0.25(これが最も特異的)
・異常Q波がない
・Spodick's sign(心膜炎の80%に見られる所見で、基線がなだらかに低下する)
(J Emerg Med. 2020 Apr;58(4):562-569.)
広範囲な誘導でPR低下を伴うST上昇、aVR誘導でPR上昇を伴うST低下、V6誘導でST/T比≧0.25, Spodick's signといった特徴的な所見がある。
※この論文中ではSpodick's signは30%弱にしか認めなかったと書かれているけど、個人的にはもっとよくみるような。
帰してはならない心膜炎の特徴
よっぽど自信と根拠がなければ循環器に相談しておいた方が無難。
一応、帰してはいけない心膜炎は以下の特徴に該当する人とされています。
・発熱、症状が数日間にわたって徐々に進行
・大量の心嚢液貯留(> 2.0cm)または心タンポナーデ
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)による前治療への反応の欠如
・悪性腫瘍が疑われる