最近はビデオ喉頭鏡を使う機会が多く、直接喉頭鏡を使用する頻度は激減しました。
直接喉頭鏡とちがって、ビデオ喉頭鏡では喉頭展開は楽勝なことが多いです。
何回か練習した1年目の研修医がやろうが、私がやろうが、
声門を可視化することに関しては大差がないと思います。
(言い過ぎかも…)
「声門は見えているんだけど入らない!」
という非常に焦るシチュエーションでの対応だと思います。
その原因と対応を見ていきましょう!
声門が見えているのにチューブを誘導できない
喉頭展開は大成功!
いざ気管チューブを右手にサクッと挿管しようとしたけれど、
なかなかチューブが声門に到達しない…。
こんなときには、以下の3つの方法を試しましょう。
①スタイレットを調整する
スタイレットの形状を変形させることで操作性をよくすることができます。
Hockey stick型またはstraight-to-the-cuff型に変形させます。
気管チューブにスタイレットを通したら、まずはまっすぐにします。
そして、カフ上付近のところで少し折り曲げます。
90度に折り曲げればHockey stick型になり、
それ未満の角度であればstraight-to-the-cuff型と呼ばれることがあります。

(Hagberg & Benumof's Airway Management, 5th ed)
操作性は90度にするととてもよいように感じますが、
後述する「声門まで来たのにチューブが進んでいかない」状況に陥りやすいので、
30-45度くらいの角度にしていることが多いです。
みなさんはどうですか?
②外部喉頭圧迫法を行う
チューブをうまく誘導できないのであれば、
外部から喉頭を操作してチューブを迎えにいけばいいじゃないという発想です。
BURP法が有名です。
助手に甲状軟骨を背側(Backward)、上方(Upward)、右側(Rightward)に圧迫(Pressure)してもらう方法です。

(Anesth Pain Med (Seoul) . 2021 Oct;16(4):391-397.)
あとちょっとで声門に届くんだけど…というときには有効なこともあります。
ただし、輪状軟骨圧迫法とはまったく意味合いが異なる手技であることに注意してください。
輪状軟骨圧迫法は誤嚥を防ぐための方法であり、声門の視認性に関しては悪化する可能性があります。
③ブジーを使用する
ブジーは気管チューブに比較して格段に細いです。
そのため、視野が邪魔されることなく声門へ到達させやすいです。
また、やわらかいこともあり、微細な調整が可能です。
一方でそれらがデメリットになることもあり、
口腔~咽頭壁に少しでも当たると目的の場所まで誘導しづらくなることもあります。
少し鍛錬が必要ですが、慣れておくとよいと思います。
(ブジーは次回の気道管理の回で紹介します)
声門まで来たけどチューブが進んでいかない
原因の大半は2つに集約されると思います。
1つは、チューブ先端が喉頭のどこか(喉頭蓋や披裂軟骨など)に先当たりしている場合です。
もう1つは、ビデオ喉頭鏡に特徴的な難しさに起因します。
直接喉頭鏡であればこのような事態に陥ることはあまりありません。
ビデオ喉頭鏡では間接的に声門を覗くことになります。
このことからチューブを進めるベクトルと気道のベクトル(声門から背中側に向かうベクトル)が一致しづらくなります。
これがチューブが進まない原因になります。
前述したようにカフ上部を90度近くまで折ってしまうと、
気管チューブのベクトルと気道のベクトルが直角に交わるような状態になりえます。
こんな状態ではチューブが進んでいかないのは自明です。
これらの原因を解消する手段を考えてみましょう。
①押してダメなら引いてみる
この作戦は、医療においても日常生活においても威力を発揮することがあります。
まずは左手に持っている喉頭鏡の操作です。
可能な範囲で(1-2cmほどの範囲内)ブレードを浅くしてみましょう。
失敗するときには力み過ぎていてブレードを深く入れすぎてしまっていることがあります。
ブレードが深すぎると、声門入口部が天井側を向きすぎる原因になります。
そうなれば、チューブ挿入のベクトルと合わなくなることがあります。
なので、ブレードを少し引いてみましょう。
もしかしたら多少Cormack-Lehane分類が下がるかもしれませんが、
その犠牲を払ってでもやってみる価値はあります。
そのうえで入ればヨシ、入らなければ…
左を見たら右を見る、ということで右手の操作で「引いてみる」を実現します。
チューブ+スタイレットの先当たりがあるかもしれないので、
2-3cmスタイレットを引き抜いてからゆっくりと挿入してみます。
これでもダメなら、
スタイレットをすべて引き抜いてから反時計回りに気管チューブを回転させながら進めると、うまくするっと入ることがあります。
力ずくになってはいけませんが、回転させながらにゅるんと進めるイメージです。
通常の気管チューブは左側にベベルが開口しています。
これを気管前壁に「沿わせるような角度」にすることをイメージして操作します。

②Parker 気管チューブを導入してもらう
これはもう病院で採用しているかどうかになりますが、
Parker 気管チューブを使用するとチューブが進まないことはあまり問題にならなくなります。
Parker 気管チューブは、チューブ先端のベベルの形状が気管前壁に沿いやすいように設計されています。
そのため、①の段階で行ったような反時計回りに気管チューブを回転させながら進めるといったやや特殊な手法をとらずとも挿管が容易になります。
安全性のためには導入を検討してもらってもいいでしょう。
ビデオ喉頭鏡では「声門は見えているのに入らない」シチュエーションに遭遇することがあります。
対応を覚えておけば「気道緊急」にさせずにサラリと乗り越えられるかもしれません!
ぜひ練習してみてください。
でも、どうしてもだめなら基本に戻ってバッグバルブ換気(BMV)をやりながら、もしくは声門上器具(SGA)を挿入して、うまい人の到着を待てばいいです。
ちょっと余談~こまったときの換気方法:TTIP
BMVの代替となりそうな緊急換気方法を見かけたので備忘録代わりに貼っておきます。

(Anesth Analg . 2025 Feb 1;140(2):280-289.)
A:通常のVE法(BMV)
B:チューブ挿入長は「外耳道~上顎切歯」
C:チューブを舌の彎曲と一致するように口咽頭に挿入し、鼻と口を密閉して換気する
BMVがうまくいかない(あごひげやるい痩などでマスクがフィットしない、顔面外傷など)、SGAやエアウェイがすぐに出てこないような状況では救世主となりえるかも…!
この手法はTTIP(endotracheal tube in the pharynx)というようです。
TTIPをやりながら麻酔科医をコールするなんてこともあるかも?