救急外来では、患者さんの感情が高ぶり暴言・暴力などが発生することがあります。
非薬物的な対応のしかたを知っておきましょう。
自分とスタッフを守れるようになってください!
今回は、危険な状況を回避するために必要なスクリーニング方法や非薬物的な対応を見ていきます。
ハイリスク患者
救急外来で興奮したり怒ったりするハイリスク患者として、以下が特定されています。
・再来患者
・他院で治療したが治癒しなかった
・待ち時間が長い
・医療過誤を経験した家族
・過保護
・アルコール使用障害
・未成年のみの受診
・権利意識が強い患者
・反社会的勢力に所属
だいたいほとんどの患者が該当しそうですね。
怒れる患者の見つけ方
"STAMP" を使ってチェックしましょう!
・Staring:注視
にらみつける、または視線が合わない(ストレスをうちにため込んでいる)
・Tone and volume of voice:声のトーンとボリューム
声を荒げる、どなる、いきなりだまる、皮肉または辛辣な回答をする
・Anxiety:不安
精神疾患、薬物乱用、認知症、てんかん、糖尿病、頭部外傷は不安を増幅させる
・Mumbling:ぶつぶつ言う
不明瞭・支離滅裂な話し方、質問や発言の繰り返しはフラストレーションを表す
・Pacing:歩き回る
歩き回ることは興奮の高まりの徴候
また、別のスクリーニングツールとして
「修正版Historical, Clinical, and Risk assessmentツール第3版に基づく初期暴力スクリーニング」なるものも存在し、これで高得点(>6点)を示したものはリスクが高いとされています。
・過去の暴力歴あり 1点
・殺人または暴力的な思考 1点
・暴力を振るう意思 1点
・薬物乱用 1点
・外傷歴(TBI、PTSDなど)1点
・洞察力や判断力の欠如 1点
・不安定性/予測できない行動、気分の不安定性 1点
・スタッフの直感 1~2点
比較的安全な日本では、このスクリーニングツールで7点以上を叩き出すことはあまりお目にかかれないでしょう。
スクリーニングとして考えるのであれば、どれか1つでも該当すればハイリスクと考えるくらいでいいのではと思います。
怒れる患者への対応(非薬物的)
相手をエスカレーションさせない、したとしても自身の安全性を確保できるように立ち回ることが要求されます。
・穏やかな低いトーンで簡潔に話す
ひきつった声、高い声、早口は興奮を助長(自覚がある人は特に要注意!)
アイコンタクトを取ること
・患者のパーソナルスペースを尊重する
あまり近づかない方がお互いのため(最低うで2本分は離れる:ネックレスや名札など危ないものは外してから)
個室に誘導してもドアを閉じない(逃げ場は確保しておく)
・相手の態度を言語化する
決して挑発はしてはならないが、態度を言語化することで鎮火作用がある
要望や感情を把握して共感すること
・怖い時は怖いと伝える
こちらの考えも言語化
怖いと感じたときには警備員と一緒に対応するか、閾値は低く警察事案にする
※警察は暴行や器物損壊があればすぐ動く、他の患者に迷惑がかかっているような状況であっても比較的すぐ動いてはくれる
・患者さんを助けたい一心で救急外来で働いていることを伝える
つらい、または緊急事態なのではないかと思って不安な気持ちで来院していることをわすれずに
不安な気持ちに同意するか、意見が異なる場合にはそれを認めて一緒に考える
選択肢を提示して、見通しを検討する
・個人攻撃を真に受けない
・友人や家族を味方につける
大暴れしてしまったら…
身体拘束を行わざるを得ない場合もあります。
人海戦術で戦うことになります。ヒトをなるべく集めましょう。
身体拘束には最低5人を要します。
頭部+四肢の大関節に1人ずつ、合計5人は必要です。
ただし、自傷他害の恐れがあり、言語的な制御が不可能であることが前提であり、
これはカルテに記載が必要です。
怒れる患者への薬物を使った対応などは以下を参照してください。