血管浮腫は時に致命的になりうる疾患です。
血管浮腫を呈してERを受診する患者のうち、10-30%がACEiによるものだそうです。
(Ann Allergy Asthma Immunol. 2008 Apr;100(4):327-32./Ann Allergy Asthma Immunol. 2009 Dec;103(6):502-7./Laryngoscope. 2017 Apr;127(4):828-834./Ann Allergy Asthma Immunol. 2012 Dec;109(6):395-402.)
確かにこれまで出会った血管浮腫の半数くらいはこれだったようにも思います。
ACEiによる血管浮腫はブラジキニンが関与していますが、ERで典型的に行われる医療は抗ヒスタミン薬やステロイドなどのヒスタミンにより誘発される血管浮腫への治療が主になっており、ブラジキニン誘発性血管浮腫への治療があまりされていない現状があります。
そういった支持療法と、基本的に重症の場合には気道管理を行なうことが唯一の有効な治療法とされています。
挿管を要する患者をあぶりだす目的でretrospective studyがされました。
Mudd PA et al. Emergency department evaluation of patients with angiotensin converting enzyme inhibitor associated angioedema.
Am J Emerg Med. 2020 Dec;38(12):2596-2601.
PMID: 31932133.
・都市部の3次救急センターにおけるretrospective study
・2013年1月1日~2015年12月31日までにERを受診したACEi関連血管浮腫の全ての患者を特定し、初期症状発症から7日以内の全ての患者が対象となった
・18歳未満/カルテから血管浮腫ではないと判断された症例/外傷や最近の侵襲的処置がある症例/再発性血管浮腫を引き起こす他の慢性疾患をもつ症例/ACEi以外の薬剤が関与すると判断された症例は除外された
・合計190症例が対象となった
・合計18人(9.5%)が気管挿管された
◦外科的気道確保を要した症例はなし
・挿管を要した全ての患者はERにて挿管されており、入院後に挿管を要した症例はなし
・全症例のうち、90%で症状発現から挿管までの時間が記録されていた
◦記録された範囲では、挿管された患者は全て発症から6時間以内の受診であった
‣発症から6時間以降で挿管された患者はいなかった
‣ただし、3割ほどは記載漏れがありわからない
・挿管されなかった患者と比較して、挿管された患者では以下の所見が有意に多かった
◦嗄声(声の変化)
◦流涎
◦呼吸困難
◦舌前部の腫脹
◦よく認める口唇の腫脹は挿管と関連がなかった
‣口唇腫脹のみの症状が102人(54%)
‣ただし、口唇腫脹のみの症状であっても挿管された患者が10%強いた
◦そのうち50例では気道浮腫が認められた
◦声門上浮腫または喉頭浮腫があると有意に挿管を要した
◦挿管された患者の80%に声門上浮腫が認められた
発症から6時間以内というのは重要なのかも。
ただ、全ての症例で発症から挿管までの時間が記録されていなかったことがlimitationですが…。
まとめ
・血管浮腫の原因として10-30%ほどがACEiと報告されている