久しぶりの更新です!
とりあえず毎日 X で読んだ論文をポストしていくことを目標にしていますが、見返しづらくなってきました。
なので、備忘録として簡単にまとめを作っていきたいと思います。
(頑張れれば月1!現実的には2か月に1回くらい?)
- 蘇生
- 循環器
- 呼吸器
- 気胸ガイドライン(Eur Respir J . 2024 May 28;63(5):2300797.)
- NIV中の鎮静はデクスメデトミジン(Heart Lung . 2024 Jan-Feb:63:42-50.)
- 呼吸器感染症へのステロイド投与(JAMA . 2024 Jul 23;332(4):318-328.)
- 非HIVの重症PCPへのステロイドはちょっと待った(Intensive Care Med . 2024 Aug;50(8):1228-1239.)
- ステロイド投与のガイドライン(Crit Care Med . 2024 May 1;52(5):e219-e233.)
- pre-oxygenationはNIV!(N Engl J Med . 2024 Jun 20;390(23):2165-2177.)
- 脳神経
- 消化器
- 肝硬変+UGIBではTXA効果あり!?(Hepatology . 2024 Aug 1;80(2):376-388.)
- REVISE試験(N Engl J Med . 2024 Jul 4;391(1):9-20.)
- REVISE試験を含むメタ解析(NEJM Evid . 2024 Jul;3(7):EVIDoa2400134.)
- ランソプラゾールとセフトリアキソンの併用を避けよう(JAMA Netw Open . 2023 Oct 2;6(10):e2339893.)
- 急性膵炎ガイドライン2024(Am J Gastroenterol . 2024 Mar 1;119(3):419-437.)
- 腎
- 感染症
- 外傷
蘇生
ブジーを使った挿管(Ann Emerg Med . 2024 Feb;83(2):132-144.)
ブジーを気管挿管に使用することで、初回成功率がUPするというメタ解析です。
特にCormack III-IVに効果的でした。
ブジーは気道管理の強い味方です!
嘔吐や多発外傷、外科的気道確保にも使えますし、初心者には歯の損傷を防げるメリットもあります。
慣れるまでは少し時間がかかるけど、絶対に使えるようにしておきたいツールです。
GCS<9は絶対的な挿管基準ではない(JAMA . 2023 Dec 19;330(23):2267-2274.)
フランスで行われたRCTで、
薬物中毒疑いのGCS<9患者を対象に、緊急の適応がない限り挿管を避ける保守的戦略を採用しました。
挿管率が58%→16%に減少し、安全性は確保されていました。
肺炎を含めた有害事象も減少しました。
機械的な基準でGCS<9だから挿管する、ではなくて多角的な視点で挿管の基準を見極める必要があります。
循環器
重症肺塞栓症の初期管理(Chest . 2024 Jun 1:S0012-3692(24)00675-5.)
・右心機能を評価して輸液または利尿を決定
・ノルアドレナリンとバソプレシンを使用してよい
・右心負荷軽減のために低酸素血症なくとも酸素投与
・陽圧換気を避ける
・血栓摘出は様々な方法で検討
・他の介入が失敗したら早期にECMOを導入
輸液をしすぎると右室が拡大して左室に影響するようになり、余計に循環動態を悪化させることがあるので要注意です。
低血圧に対してはノルアドレナリンが第一選択ですが、バソプレシンには肺動脈圧を上げない効果があるので早めに併用すると良さそうですね。
呼吸器
気胸ガイドライン(Eur Respir J . 2024 May 28;63(5):2300797.)
原発性自然気胸では、症状が軽度で臨床的に安定していれば「サイズに関係なく」保存的治療が提案されています。
これはNEJM2020の影響を受けています!
日本では4時間の経過観察を外来でするのは難しいかもしれません。入院させたうえで観察するとか、患者の価値観に応じて治療方針を相談する際の情報共有資料として使うのはアリかも。
NIV中の鎮静はデクスメデトミジン(Heart Lung . 2024 Jan-Feb:63:42-50.)
メタ解析によれば、
・急性呼吸不全患者のNIV中に鎮痛鎮静薬を使用することで気管挿管率とせん妄リスクが低減
・デクスメデトミジンは他の鎮静薬よりも優れた効果
やっぱDEXですね。特に徐脈のモニタリングは必要です。
呼吸器感染症へのステロイド投与(JAMA . 2024 Jul 23;332(4):318-328.)
低用量ステロイドはうまく使えば死亡率低下への効果があります。
◎低酸素血症を呈するCOVID-19
◎重症市中肺炎
◎HIV陽性の重症PCP
〇ARDS
〇HIV陰性の重症PCP
×インフルエンザ肺炎
×酸素不要のCOVID-19
非HIVの重症PCPへのステロイドはちょっと待った(Intensive Care Med . 2024 Aug;50(8):1228-1239.)
ICUに入室した重症PCP(多くが非HIV)を対象とした前向き観察研究。
抗菌薬投与の遅れとステロイド投与は、死亡までの時間短縮と関連がありました。
未確定の呼吸不全として治療を始めるときは重症ならステロイドは入るだろうな~と思いますが、なんでもかんでもステロイドの風潮にちょっと待ったをかける重要な研究でした。
ステロイド投与のガイドライン(Crit Care Med . 2024 May 1;52(5):e219-e233.)
〇敗血症性ショック
※ヒドロコルチゾンにフルドロコルチゾンを併用するかは推奨なし
※高用量はNG!
〇ARDS
◎重症市中肺炎 ※非重症には推奨なし
敗血症性ショックに対するヒドロコルチゾン+フルドロコルチゾンってやってますか?経鼻胃管からの投与になります。個人的にはやったりやらなかったり。
pre-oxygenationはNIV!(N Engl J Med . 2024 Jun 20;390(23):2165-2177.)
game changer論文です。
ERとICUでの重篤な成人患者1300人を対象にしたPREOXI試験です。
NIPPV vs マスクでのpre-oxygenation戦略を比較しました。
NIPPVは重篤なSpO2低下を防ぎ、心停止リスクが減少しました(NNT112)。
NIPPVで気になるのは誤嚥ですが、両手法による有意差はありませんでした。
特に肥満や呼吸不全の存在はNIPPVの恩恵が得られそうです。
ただし、ER症例は少なめだったのが難点ですが…。
誤嚥させずに安全なpre-oxygenationができるとわかっただけで収穫があります。
脳神経
SAHを除外するための腰椎穿刺はした方がいい?(JAMA Netw Open . 2024 Apr 1;7(4):e247373.)
AHAのガイドラインでは、発症から6時間以上経過した単純CTで陰性のSAH疑い患者に対しては腰椎穿刺を推奨しています。この推奨は、3mm未満の破裂動脈瘤に対するCTAの感度が適切ではないことに由来しています。でもリアルワールドではどうなのか?
2015年~2021年にかけて、米国のERではCTAの使用が毎年18.8%増加し、腰椎穿刺は毎年11.1%減少していました。CTAを行った症例のうち6例がSAHを見逃されてしまっていました。感度97-98%であり、やはり3mm未満の動脈瘤では感度が低下することが確認されました。
個人的には検査前確率が高いと考える場合にはCTA陰性なら腰椎穿刺までいく、という流れで診療すると思います。
thunderclap headacheの鑑別、できますか?(N Engl J Med . 2024 Jun 13;390(22):2108-2118.)
ERでred flagのthunderclap headacheの鑑別ができるようになりたいものです。
SAHを除外して満足!になってしまいがちです。
SAHはもちろん、そのほかの鑑別疾患も網羅して記載されています。
非典型的な場所にSAHを見たときの動き方や、急性頭蓋内疾患での心電図変化の原因もばっちり解説。
追体験で臨床の腕を磨いていきましょう。
外傷性脳損傷へのトラネキサム酸(TXA)投与(Am J Emerg Med . 2024 Jun:80:35-43.)
11RCT, 11299人を対象にした2024年のメタ解析では、TXAの投与は死亡率や転帰不良の発生率に影響を与えませんでした。
でも、3時間以内に投与することで血腫増大を抑制する効果はあるようです。
TXA投与のタイミングは外してはいけません。現時点では、発症から3時間以内であればTXAを投与しておくメリットはあると言えるのではないでしょうか。
急性脳損傷で挿管した患者にはセフトリアキソン単回投与(Lancet Respir Med . 2024 May;12(5):375-385.)
挿管された急性脳損傷患者345人を対象とした、フランスの8施設で実施された二重盲検RCTです。
CTRX 2gの単回投与により早期VAPが大幅に減少しました。
(CTRX群:14% vs プラセボ群:32%)
有害事象はありませんでした。
挿管する際にはセフトリアキソン単回投与はオプションとして考えておきたいです。
消化器
肝硬変+UGIBではTXA効果あり!?(Hepatology . 2024 Aug 1;80(2):376-388.)
HALT-IT試験の結果から消化管出血に対するTXA投与はしない方がよいという風潮に傾いています。
しかし、肝硬変に上部消化管出血を合併した線溶亢進が起こりやすい状況下であればTXAの効果があるかもしれません。
CTP class B/Cの上部消化管出血(UGIB)患者にTXA(トラネキサム酸)を投与した結果、治療失敗率が大幅減少!
REVISE試験(N Engl J Med . 2024 Jul 4;391(1):9-20.)
大規模RCT(68ICU4821人の侵襲的人工換気を受けている患者を対象)でPPI vs プラセボを比較しました。
PPIは臨床的に重要な消化管出血を減少させましたが、死亡率には影響を与えませんでした。
ついでに肺炎、C. difficile感染増加もありませんでした。
なにも目新しいことはない試験、重症患者にはこれまで通りPPI入れます。
REVISE試験を含むメタ解析(NEJM Evid . 2024 Jul;3(7):EVIDoa2400134.)
PPIで臨床的に重要な消化管出血は減りますが、死亡率には影響を与えませんでした。
サブグループ解析では、重症度の低い患者では死亡率が低下し、重症度の高い患者では死亡率上昇の可能性が指摘されました。
えっ、、、でも重症度高ければまぁPPI入れるよな…。
ランソプラゾールとセフトリアキソンの併用を避けよう(JAMA Netw Open . 2023 Oct 2;6(10):e2339893.)
3万人以上を対象にした多施設後ろ向きコホート試験です。
ランソプラゾール使用は他のPPI使用に比べて、心室性不整脈または心停止リスクが高まり(NNH 58.8)、全原因による院内死亡率も高まることが示されました。
ランソプラゾールとセフトリアキソンなんてよく使われる組み合わせなのに、怖いリスクがそれなりに高いので要注意です。少し気にかけた方がよさそうです。
急性膵炎ガイドライン2024(Am J Gastroenterol . 2024 Mar 1;119(3):419-437.)
🔹輸液はLRがベスト!hypovolemiaなら10ml/kg bolus→1.5ml/kg/h
🔹入院後6-8時間以内にBUNとHctをチェック!
🔹胆管炎合併なら24時間以内にERCP
🔹感染がなければ抗菌薬は不要!
🔹軽症は24-48時間以内に低脂肪固形食、重症は経腸栄養
最近出たRCTを潮目に輸液の目安が変わりました。少し前までは何が何でも大量輸液を推奨するような風潮でしたが、現代は少し控えめな推奨になりました。
あくまで目安であり、モニタリングは十分にしておく必要があります。
他のマネジメント3本柱として、鎮痛を早期に十分に、栄養を早期に始めるというのが常識になりました。
腎
マグネシウムに関するreview(N Engl J Med . 2024 Jun 6;390(21):1998-2009.)
・重症では65%以上が低Mg血症
・TdPや喘息急性増悪、子癇などに活躍する治療薬としても有名
・低K血症や低Ca血症と密接に関連し、低Mg血症の補正が重要
・2型糖尿病患者では低Mg血症が多いが、SGLT2iがMgを上昇させる効果がある!
・よくつかうPPIも低Mg血症を誘発する
マグネシウムは鎮痛薬やrate/ rhythm control薬剤としても使われていて、汎用性が高い"薬剤"ですよね。
感染症
日本版敗血症診療ガイドライン2024 (J-SSCG2024)(https://www.jsicm.org/news/news240606-J-SSCG2024.html)
最新版の敗血症ガイドラインです。
小さな変更がありますが、おおむねこれまで通り+ちょっとしたアップデートくらい。
しかしDIC診療どうしようかな~。アンチトロンビン、リコンビナント/トロンボモジュリンやらの推奨が少し上がった。
アプリを入れておくといいですね! ↓↓↓
「日本版敗血症診療ガイドライン2024 【アプリ版】」をApp Storeで
ERでの敗血症診断はゲシュタルト!(PMID: 38530675)
医師のゲシュタルト vs スコアリング&AIモデルで比較したところ、ER受診から15分/60分時点で医師のゲシュタルトは敗血症の同定においてスコアリングやAIに比較して優れていたことがわかりました。
ただし、免疫不全リスクには要注意!
肝硬変、糖尿病、ESKD、UCなどで見落としがありました。
どのくらいの確率で敗血症か?を見分ける力は医師のゲシュタルトにかなうものはありません。あたりまえですよね、だってER診療をしていて「この人、感染症かも」って思わないことはありえません。何点だったら抗菌薬を入れるのか、何点だったら入れないのかという線引きか難しいんですよね。
敗血症かな、という自分の感覚は信じてもよさそうです。
血管内カテーテルの使用に伴う血流感染およびその他の感染症予防のためのガイドライン2024
(https://iris.who.int/handle/10665/376722)
WHOは、成人、青少年、児童、新生児におけるPIVCおよびPICCの「ロックオフ」フラッシングに無菌生理食塩水を使用することを提案する。
ヘパリン誘発性血小板減少症のリスクを回避するための推奨ですが、実臨床ではどうでしょうか?
細かいところですが、少しずつ標準化されていくとよいですね。
外傷
待望のPECARN rule validation!(Lancet Child Adolesc Health . 2024 May;8(5):339-347.)
小児腹部外傷でCTを撮るべきかの指標について、あのPECARNが多施設前向き試験を実施しました!
腹痛、嘔吐、GCS<14、呼吸音減弱、腹壁外傷痕、胸壁外傷痕、腹部圧痛のすべてがない場合にはCTは不要とされました。
感度、陰性的中率ともに100%!
対象はかなり厳しめの重度の受傷機転を持つ患児であり、「緊急介入が不要な」損傷は見逃してしまうことに注意が必要です。
これまで通り、腹部診察、EFAST、血液尿検査(AST/ALT、血尿の有無など)を調べることは必要です。
ルールとして頭部ほどの使いやすいはなさそうですね。
PECARN:小児の頚椎損傷評価ルール!(Lancet Child Adolesc Health . 2024 Jul;8(7):482-490.)
20000人以上のデータで作成&検証されました!
・高リスク(重大なABCDの異常)→CTを考慮
・意識障害、頸部痛/正中圧痛、他の重大な外傷→レントゲンを検討
・他は経過観察でOK!
上記により、感度94.3%、陰性的中率99.9%、CT使用は半分以下になります!
被虐待児にも評価されており、同様の感度と陰性的中率でした。
これまではNEXUS(一応1歳以上101歳以下が対象だけど、小児はごく少数でその中で頸部損傷を認めたのは1%未満)とかCCR(16歳未満は対象外)しかありませんでしたが、小児の頚椎損傷のルールの鉄板となりそうです。