病歴/身体所見
・22歳(妊娠28週)
・重度の右眼窩後部痛と右眼球突出のためER受診
・これまでに特に既往はなかった
・診察では眼球突出以外に神経学的異常なし
・視力以上なし、眼球運動により疼痛が誘発された
検査
・CTおよびMRIにて1cmほどの眼窩内腫瘤が認められた
診断
眼窩内海綿状血管腫
・症状が突然発症であったため病変がさらに進行する可能性が懸念された
・眼窩コンパートメント症候群発症など監視のため、眼科に経過観察入院となった
・特にイベントはなく経過したため翌日退院となった
・手術的介入は産後まで延期された
(Surv Ophthalmol. Jul-Aug 2017;62(4):393-403.)
・通常は片側性で女性により多い
・緩徐に進行する眼球突出は70%の症例に認められる
(Surv Ophthalmol. Jul-Aug 2017;62(4):393-403.)
・急性発症や腫瘍内出血に起因する症例はまれであり、これまでの文献では9例しか報告がない
(J Clin Neurosci. 2019 Sep;67:272-275.)
・妊娠関連の成長因子を含む女性ホルモンが血管奇形の成長に関与していると考えられている
(Surv Ophthalmol. Jul-Aug 2017;62(4):393-403./Neurol Med Chir (Tokyo). 2013;53(8):555-60.)
・造影CT/MRIが病変特定に有用
(Surv Ophthalmol. Jul-Aug 2017;62(4):393-403.)
そういえば、眼球突出の鑑別診断ってあげられない…
ちょっと調べてみると以下のような鑑別診断があげられるようです。
・成人では甲状腺眼症が多く、小児では眼窩蜂巣炎が多い
・眼球突出の鑑別をあげる際には以下の4つの病因を考慮すること
そういえば、最近③眼窩からの静脈還流異常…頸動脈海綿静脈洞瘻を勉強しました。
まとめ
・眼窩内海綿状血管腫は良性の血管奇形であり、成人でよくみられる原発性眼窩病変の1つだが急性発症の眼球突出や眼痛を呈することはまれなイベント
・眼球突出の鑑別を挙げられるようにしよう。成人では甲状腺眼症、小児では眼窩蜂巣炎が多い