病歴/身体所見
・11歳男性・突然発症の右上腹部痛と嘔吐のためER受診・発熱なし、HR92bpm、右上腹部に圧痛あり・血液検査は特に異常なし…WBC9670/mm3 (左方移動なし)検査
診断
嚢胞内出血を伴う腸間膜嚢胞
・緊急手術となり、9cm*5cmの腸間膜嚢胞が摘出された後腹膜や膵臓と癒着していた
・腸間膜嚢胞は小児ではまれであり、通常は無症状
・閉塞/出血/破裂/感染などの合併症を発症し急性腹症となることがある
(Afr J Paediatr Surg. Sep-Dec 2010;7(3):140-3.)
・正確な原因は不明であるが、異所性リンパ組織の良性増殖による嚢胞であるという説が最も有力
・診断はCTにより、治療は外科的切除
(Radiographics. May-Jun 2009;29(3):721-40./Int J Pediatr Adolesc Med. 2016 Sep;3(3):109-111.)
腹痛の患者さんに対して、「血液検査でスクリーニング」していませんか?
本症例のように急性腹症であっても血液検査がほとんど動いていないこともまれではありません。
腹痛に対して血液検査でわかることはあまりありません。胆管炎くらいでしょうか…。血液検査の結果によって対応を考える習慣があれば捨て去ったほうがよいです。
小児の腹痛(腹部の器質的疾患)は "double AIM" で覚えておきます。
(残念ながら今回の腸間膜嚢胞はまれなので入ってませんが…)
A
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appendicitis(虫垂炎)
adhesion(癒着)
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I
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inguinal hernia(鼠径ヘルニア)
intussusception(腸重積)
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M
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malrotation/midgut volvulus(回転異常/中腸軸捻転)
Meckel's diverticulus(メッケル憩室)
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まとめ
・腸間膜嚢胞はまれに閉塞/出血/破裂/感染などの合併症を発症しうる
・腹痛の対応の際に血液検査を参考にしないこと
・小児の腹痛は "double AIM" で鑑別をあげる