病歴/身体所見
・83歳女性
・糖尿病、高血圧、CKDの既往がある
・意識障害のためERへ搬入された
・BT38.8℃, BP98/64mmHg, HR124bpm
・下腹部はやわらかかった
検査
・血液検査…WBC15820/mm3, 乳酸10.4mmol/L
・尿検査…細菌+
・腹部超音波とCTが実施された
恥骨上より観察。膀胱前壁に高エコー領域(矢頭)と、腹壁下にdirty shadow(矢印)
膀胱壁に気腫性変化(矢頭)がある。矢印は腹壁
診断
気腫性膀胱炎
・広域抗菌薬により治療された
・後日、尿培養よりEscherichia coli, Klebsiella pneumoniaeが検出された
・入院3日時点でのPOCUS所見は改善
膀胱壁(矢頭)と膀胱内尿(気尿なし:*)が観察される
・患者は20日後に退院となった
・コントロール不良の糖尿病、閉塞性尿路疾患、免疫不全、神経因性膀胱がリスク
(Can Urol Assoc J. Nov-Dec 2013;7(11-12):E754-6.)
・抗菌薬静注、膀胱ドレナージ、基礎疾患のコントロールが治療になる
(Intern Med. 2014;53(2):79-82.)
・抗菌薬への反応性が乏しい場合や壊死組織があるような場合には外科的介入を要することがある
(W V Med J. Nov-Dec 2004;100(6):232-3./J Am Osteopath Assoc. 2010 Feb;110(2):91-4.)
・気腫性膀胱炎による死亡率は7%程度
(BJU Int. 2007 Jul;100(1):17-20./Urology. 2012 Jun;79(6):1281-5.)
まぁ、よく見ますよね。
初めて見たときには面食らいましたが、意外と外科的介入なく治療可能なことが多いです。ちゃんとドレナージが効けば、尿路感染は比較的治療しやすい印象があります。
まとめ
・気腫性膀胱炎はコントロール不良の糖尿病、免疫不全、閉塞性尿路疾患などを背景に発症する致命的な尿路感染症の1つであり、基本的には抗菌薬治療可能だが、場合によっては外科的介入を要する疾患である