りんごの街の救急医

青森県弘前市の救急科専門医による日々の学習のまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。Twitterでも医療系のつぶやきをしています@MasayukiToc

症例19:発熱と前頭部腫脹を認めた4歳女児(Ann Emerg Med. 2020 Nov;76(5):679-694.)

病歴/身体所見

・4歳女児
・既往歴なし
・9日間持続する発熱/間欠的頭痛/前頭部腫脹のためER受診
・母親によれば、「悪い風邪」に数週間前にかかり、5日前に前頭部打撲したという
・血液検査ではWBCCRP上昇を認めた
・身体所見では前頭部の腫脹と眼窩周囲浮腫を認めた

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検査

・CTが実施された
 

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診断

Pott’s puffy tumor

 

患者は緊急ドレナージ術を受け、広域抗菌薬投与を受け、完全に治癒した

 

 

 

Pott’s puffy tumor前頭部の骨髄炎を伴う骨膜下膿瘍
 
・小児ではまれ
 ◦小児で発症する場合には全年齢で起きるが、思春期で比較的多い
 
・多くの場合には急性細菌性副鼻腔炎の合併症として発症する
 ◦その他、外傷/手術/薬物使用/乳様突起炎/歯性感染症など
(Laryngoscope. 2020 Jan;130(1):225-231.)
 
発熱、頭痛、前頭部や頭皮の腫脹と圧痛を認める
 ◦頭蓋内病変進行により嘔吐/全身倦怠感/意識障害なども発症しうる
(Childs Nerv Syst. 2010 Jan;26(1):53-60.)
 
・診断はCTおよびMRIにてなされる
・外科的ドレナージと抗菌薬投与(streptococcal, staphylococcal, 嫌気性菌)を行う
(Childs Nerv Syst. 2010 Jan;26(1):53-60.)

 

 

副鼻腔炎の病歴がある患者に発症した前頭部腫脹ではPott's puffy tumorを疑わないといけません。

感染性アテロームとして切開しておわり~では済まなそうです。

 

 

以下、Childs Nerv Syst. 2010 Jan;26(1):53-60.より症例を貼っておきます。

 

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(a)前頭部腫脹
(b)造影CT:帽状腱膜下に膿瘍を認める
(c)MRI T2WI:右前頭葉に周囲造影効果のある膿瘍
 

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Pott's puffy tumor、硬膜下膿瘍、前頭洞蓄膿
 
 

まとめ

・特に、急性副鼻腔炎の病歴がある患者に発症した前頭部腫脹/疼痛ではPott's puffy tumorを疑おう。

・Pott's puffy tumorではドレナージと広域抗菌薬投与が治療となる。