病歴/身体所見
・33歳女性
・右胸痛のためER受診
◦右側臥位になると疼痛が増強する
・月経周期に合わせて増悪する
・息切れ/発熱/外傷/腹痛/子宮内膜症の病歴を否定
・右胸部の呼吸音が減弱していた
検査
・CXRとCTが撮影された
診断
月経随伴性気胸
・入院して胸腔鏡下手術が行われた
◦月経随伴性気胸の診断となり、複数の縦隔/横隔膜嚢胞からの出血を認め、血胸が明らかになった
・胸膜癒着術が行われた
・3か月後に骨盤痛と月経困難症のため診断的腹腔鏡検査を受け、重度の子宮内膜症と診断された
◦胸部子宮内膜症との関連が指摘されている
(Kardiochir Torakochirurgia Pol. 2016 Jun;13(2):117-21.)
・月経開始から72時間以内に発症する
・ほとんどの症例(>90%)で右側に発症し、血胸を伴う場合もある
(Cureus. 2018 May 2;10(5):e2567./Respir Med Case Rep. 2020 Mar 5;30:101036.)
・診断は臨床的になされるが、胸腔鏡下手術により確認されることもある
・治療はホルモン療法や手術、胸膜癒着術などによる
なんで右側優位なんでしょう?以下のような機序が考えられているようです。
・腹水に含まれる子宮内膜組織が、骨盤から右傍結腸溝に沿って腎下腔へ時計回りに移動することによる
・この動きには2つの機序が関与している
➀子宮内膜組織が左方向へ移動するのを防ぐ鎌状靭帯の存在
②呼吸による腹腔内圧の変化により右横隔膜が肝臓に対して収縮
→ピストンのような効果を生み出し、右横隔膜を横切るような子宮内膜組織の動きが強化される
う~ん、わかったようなわからないような…。
まとめ
・妊娠可能年齢の女性の繰り返す胸痛では月経随伴性気胸を考える
・月経開始から72時間以内、多くは右側に発症する