妊婦の外傷のときに必ず考えておかなければならない重要疾患として、
常位胎盤早期剥離があります。
妊婦の重症外傷って当院ではそこまで多くないし、
そもそも正常/異常な胎盤のCT所見なんぞさらに見たことがないため、
ここで一度勉強しておくことにしました。
勉強してみて思いましたが、
常位胎盤早期剥離診断の個人的な感度/特異度はかなり低めです。
(Emerg Radiol. 2009 Sep;16(5):365-73.)
(Emerg Radiol. 2019 Feb;26(1):87-97.)
正常所見
①妊娠第1期の正常な胎盤
a)在胎週数5週:胎盤は他の子宮成分と区別できず、胎児は見えない
b)在胎週数10週:絨毛膜下液が認められる(白矢印)
c)在胎週数12週:10週と同様の所見
②妊娠第2期の正常な胎盤
a)在胎週数13週:胎盤は不均一となり、子宮筋層と区別可能
b)在胎週数19週:子宮筋層(黒矢印)の収縮により胎盤や子宮の厚さが増している
c)在胎週数24週:胎盤には個別に子葉(白矢頭)が認められる
③妊娠第3期の正常な胎盤
a)在胎週数33週:絨毛膜板(黒矢頭)のくぼみを認める
b)在胎週数36週:静脈湖(黒矢頭)を認める
④妊娠第3期の正常な胎盤
a)在胎週数33週:絨毛膜板(黒矢頭)のくぼみを認める
b)在胎週数36週:静脈湖(黒矢頭)を認める
⑤常位胎盤早期剥離と判定された症例(正常な所見)
a)在胎週数14週:子宮筋層の収縮
b)在胎週数21週:子宮筋層の収縮
※白矢頭は子宮筋層と胎盤により形成される角(鈍角)を示す
c)在胎週数16週:静脈湖(白矢印)
d)在胎週数34週胎盤梗塞(黒矢頭…臨床的には重要ではない)
⑥常位胎盤早期剥離と判定された症例(正常所見…静脈湖)
a)胎盤(P)内に造影不良域(矢印)を認め、血腫かと思われた
b)同部に対応するColor Doppler:胎盤(P)内にslow flow(矢印)が認められた…正常な静脈湖の所見であった
異常所見
①妊娠第1期の疑わしい胎盤(外傷後)
・絨毛膜下液(矢頭)が大量に見られる
・このCT撮影から7日後に性器出血が出現
→超音波により自然流産が確認された
・流産が外傷によるものか、既存の異常によるものは不明であった
C)右卵巣嚢腫
②常位胎盤早期剥離
a)在胎週数23週:右側胎盤血腫
b)在胎週数29週:胎盤前部に血流がない
c)在胎週数36週:胎盤の半分以上を占める血流不全域
※白矢印はいずれも胎盤の血流がある部位とない部位との境界を示す
③常位胎盤早期剥離ではないと判定された症例(見逃し症例)
・在胎週数21週で発症した常位胎盤早期剥離だが見逃されてしまった症例
・いずれも胎盤は容易に判別可能
a)胎盤後部血腫を認める(白矢印)
b)胎盤の血流不全