病歴/身体所見
・72歳男性・2日前からめまい、右口角下垂、嗄声が出現したとしてER受診・右耳の腫脹と浸出液のためamoxicillin-clavulanateが1週間前から処方されていた・右外耳道に乾燥した痂皮性発疹を認めた・右前額のしわ寄せはできたが右口角下垂を認めた・感音性難聴と左側への口蓋垂偏位を認めた
診断
帯状疱疹によるRamsay-Hunt症候群
Ramsay-Hunt症候群は第7脳神経麻痺(顔面神経麻痺)を引き起こし、前額部を含む顔面全体の麻痺が出現することが特徴です。
しかし、本症例では前額部の運動障害はありませんでした。
これが非典型的です。頭蓋内疾患を考えられて検索されましたが陰性でした。
顔面神経が完全に麻痺する前の早期の症状を見ていた可能性があると考察されています。なるほど、そういうこともあるんですね。
さて、この症例は顔面神経麻痺だけじゃないじゃんというツッコミがありますが、顔面神経はその他の脳神経とconnectionを持つことがあるため、本症例のように顔面神経以外の脳神経症状を合併することが知られています。
◦顔面感覚障害(第5脳神経)
◦前庭機能障害(第8脳神経)
◦咽頭嚥下機能など(第9-10脳神経)
(Laryngoscope. 1978 May;88(5):787-801.)
また、まれですが両側性顔面神経麻痺も起こりえます。
顔面神経麻痺の0.3-2%程度しかないようで、私はまだ経験がありません。
この場合には、ライム病やサルコイドーシスなど考慮することになります。
まとめ
・末梢性顔面神経麻痺であっても前額部のしわ寄せができることがある
・顔面神経麻痺ではその他の脳神経麻痺を合併することがあるが、その場合には頭蓋内や海綿静脈洞病変などを積極的に検索すべし
・両側顔面神経麻痺ではライム病やサルコイドーシスを考慮する