病歴/身体所見
・62歳男性
・COPD既往あり
・2日前から持続する呼吸困難のためER受診
◦2型呼吸不全を呈していた
・気管挿管され人工呼吸器が装着された
・鎮静薬としてpropofol持続静注が開始され、ICU入室となった
・入院第5病日、尿が緑色に変色していた
診断
propofolによる緑色尿
・propofol中止により尿色は正常に戻った
→これが腎排泄されると尿が緑色になると考えられている
※代謝物自体に腎毒性はなく、良性の変化である
・緑色尿の原因として以下が挙げられる
◦薬剤
‣propofol
‣indomethacin
‣amitriptyline
‣cimetidine
‣methylene blue
◦感染症
‣pseudomonas
◦閉塞性黄疸
せっかくなので、いろいろな尿色変化について簡単にまとめておきます。
尿色変化のまとめ
(Henry's Clinical Diagnosis and Management by Laboratory Methods, Twenty-Third Editionより)
●赤色
・最も多くみられる尿色の異常
・女性であれば、経血の流入を第一に考慮すべし
・血尿(赤血球の存在)、血色素尿症、ミオグロビン尿が主な鑑別
・ポルフィリン症ではさまざまな尿色を呈する
◦鉛性…尿色の異常は呈さない
◦急性間欠性ポルフィリン症…正常だが、立位でいると暗色化する
・検査に使用する染料や薬剤の影響との関連がありえる
◦腎機能評価に使用されることがあるphenolsulfonphthalein
・ヘモグロビンが不安定な患者では、ヘモグロビンやビリルビンが陽性を示さない赤褐色尿となりえる
◦この色素はdipyrrole/bilifuscin
・ビーツ摂取でみられる赤色尿は遺伝的に影響を受けやすい人に見られやすい
●黄褐色/緑褐色
・一般的には胆汁色素、主にビリルビンと関連
・尿検体を振ると黄色の泡がみられる
◦濃縮尿との鑑別:濃縮尿では白い泡になる
・重度の閉塞性黄疸では尿が濃い緑色になることがある
へぇ~、今度やってみよっと。
●オレンジ~赤、オレンジ~茶
・ウロビリノゲンは無色だが、光や低pHではウロビリンに変換され尿色が暗黄~オレンジになる
・ウロビリンは尿を振盪しても泡には色がつかない
◦濃縮尿と判断を誤ることがある
◦尿検査により診断される
●暗茶~黒色
・ヘモグロビンを含む酸性尿は立位により暗色化する
◦メトヘモグロビン形成による
・コーラ色尿は横紋筋融解症でみられうる
・L-dopa内服中患者の一部にみられる
・まれな原因としてホモゲンチジン酸(アルカプトン尿症)とメラニンなどがある
●青、緑、青緑
・食品染料や添加物、薬物によることが多い
・薬物…amitriptyline, doxorubicin, cimetidine, flutamide, indomethacin, methocarbamol, mitoxantrone, phenylbutazone, phenergan, propofol, promethazine, triamterene, rinsapin, sildenafil
・まれだがPseudomonas感染やいくつかの遺伝性疾患でもなる
紫色に変色した尿バッグは比較的よく遭遇するので、機序を含めて説明します。
●紫
・Purple Urine Bag Syndrome (PUBS)が有名
・アルカリ尿ではより見られやすいが、酸性尿でも報告はある
・原因菌としてEscherichia coli, Proteus sp., Enterococccus, Pseudomonas aeruginosa, Provdiencia sp., Morganella morganiiが指摘されている
(Curr Urol. 2019 Nov;13(3):125-132.)
・インドールは血流に吸収され、肝臓に運搬されインドキシル硫酸(インディカン)に変換される
・インドキシル硫酸は尿中に排泄される
・尿中にいる細菌のフォスファターゼやスルファターゼによる酸化プロセスにより、インドキシル硫酸がインディゴとインジルビンに変換され、混合すると紫色になる
最後に鑑別の表を添付して終わります。
(J Am Soc Cytopathol. Jan-Feb 2020;9(1):9-19.)
まとめ
・いろいろな尿色変化を鑑別できるようになろう
・propofol使用により尿色が緑色に変化することがあるが良性の変化であり無害