病歴/身体所見
・22歳男性
・1時間前に左眼を蜂に刺されてから左眼痛と視力障害が出現したためER受診
・視力…右目:1.0、左目:手動弁
・左目は角膜浮腫と白色化を認め、蜂の針が刺さり残存していた
診断
角膜への蜂刺症
・moxifloxacin点眼を投与後、局所麻酔下に針除去術が行われた
・前房を入念に洗浄し、角膜の創が縫合された
・点眼でのglucocorticoids, 抗菌薬, 毛様体筋弛緩薬が2週間投与された
・3か月のフォローアップで角膜浮腫は消失し、視力は0.5まで改善した
・角膜の蜂刺症はまれな症例
・軽度の違和感から視力喪失までさまざまな症状を呈する
・合併症として角膜内皮代償不全(corneal decompensation)や続発性緑内障がある
・実は、急性期治療に関してはコンセンサスがない
◦外科的除去を推奨する専門家もいる
◦容易にアクセスできなければ局所ステロイド/抗菌薬/毛様体筋弛緩薬などで保存的に経過をみることもある
(Indian J Ophthalmol. 2018 Feb;66(2):262-268./Clin Ophthalmol. 2011;5:1697-700.)
・治療による合併症の違いもさまざま
◦針が残っていることで慢性角膜炎を誘発するという報告がある
◦最大28年間にわたり炎症性イベントなしに針が残存していたという報告もある
(Cornea. 2007 Dec;26(10):1277-8./Br J Ophthalmol. 1977 Oct;61(10):662-4.)
緊急で除去しないといけないと思っていましたが、案外そうしなくてもいいんですね。
とはいえ、早急に眼科コンサルトしたいです。
眼球破裂なんてことはないんでしょうか。
もう一例経験しておきます。
この人は針除去に失敗しています。
点眼液処方されてフォローされましたが、実はその薬を使わずに治ってしまったという人です(笑)
( Pan Afr Med J. 2020 Sep 14;37:54. )
角膜の炎症所見を認める。前房蓄膿もある。
針除去を試みたが失敗した。
3日後のフォロー。
患者は処方された薬剤を使っていなかったが、角膜の炎症は改善し、針も奥に押し込まれたのか見えなくなっていた
まとめ
・眼球への蜂刺症の合併症として、角膜内皮代償不全(corneal decompensation)や続発性緑内障がある
・急性期治療に関してはコンセンサスがなく、除去を推奨する専門家もいるが、アクセスのしづらさによっては保存的に経過を見ることもある