現代ではビデオ喉頭鏡が主流になったため、
喉頭展開は結構たやすくなった印象があります。
それでも、差し迫る低酸素血症の進行やショック、病態がわかりきらない不安、混雑などがあり、ERでの気管挿管は緊迫感があって難しい!
喉頭展開を最適化する方法を考えましょう。
喉頭展開の最適化① ポジショニングを整える
喉頭展開がうまくいかない原因の多くはポジショニングの問題です。
まずはsniffing positionにすることが超重要です。
頸部を伸展させて下顎を突き出すようにします。
ビデオ喉頭鏡を使用している場合には、必ずしもこのsniffing positionをとらせずとも声帯を視覚化できることが多いですが、基本姿勢としてやっておく方がミスが少ないと思います。
また、肥満がある場合にはBUHE(Bed Up Head Elevated) positionをとらせるようにします。
ベッドアップし、背中や頭頚部にタオルなどを敷いてうまいポジションを作ります。
麻酔科領域においては安全な無呼吸時間の延長と初回気管挿管成功率の向上、挿管関連合併症率の減少などに寄与することが示されていますが、救急外来での緊急気管挿管における初回成功率には差が見られていません。
それでも、酸素化に関しては明らかに良い効果があるためこの体位をとらせるのがよいでしょう。

(Emerg Med Clin North Am . 2022 Aug;40(3):443-458.)
喉頭展開の最適化② 開口操作の工夫
右手の母指と示指を使用したクロスフィンガー法を使ってなるべく大きく開口します。
ここでのポイントはsniffing positionを維持しながら開口させることです。
クロスフィンガー法のコツは、「示指を上顎臼歯に置いてしっかりと頭側に引いてsniffing positionを保ちつつ、下顎に置いた母指を天井に向かって引き上げる」ように開口すること」だと思っています。
特に、母指の力のベクトルを患者の胸部や地面方向に向けると頭頚部全体が前屈してしまい、せっかくのsniffing positionが台無しになります。
ここがうまくいかないと、喉頭鏡を入れるスペースが確保できなかったり、喉頭展開できても口腔内のスペースが狭くなることで気管チューブやブジーが口腔内にぶつかってしまい思ったところに進まなかったりなんて事態が起きることがあります。
※ブジーの使い方は慣れておいた方がいいので、そのうち別に紹介します。
喉頭展開の最適化③ 喉頭鏡の工夫
やりがちなミスとして、喉頭鏡を深く入れすぎることがあります。
これにより食道入口部を声門と見間違えて食道挿管をしてしまうことがあります。
以下の画像を見てください。
上が声門、下が食道入口部です。結構似ていますよね。

そのため、慣れないうちは喉頭鏡を深く入れすぎないように注意して、解剖を理解しながらちょっとずつブレードを進めていくとよいです。
ブレードを少し入れてみる→まだ口蓋垂が見える、もう少し進めよう→喉頭蓋が見えてきた、もう少し進めよう→喉頭蓋谷まで来た、ここでしっかり喉頭展開しよう、、、というようにちょっとずつ進んでいくことがコツです。
また、日本人ではブレードサイズ④を選択すると大きすぎて一気に食道まで見えてしまうことがあるので、ブレードサイズ③を選択することで多くは解決します。
喉頭展開の最適化④ BURP法を試してみる
体表面から外部喉頭圧迫操作を行うことで、声門の視認が可能になることがあります。
(なんか後期研修医が挿管できずに困っていた時に颯爽と現れてうまく喉頭操作してチューブを導いていた麻酔科医はまじかっこよかった…)
余裕があれば、挿管実施者が左手で喉頭展開しつつ右手で甲状軟骨を圧迫して最適な視野を探すもよし、介助者がいればBURP法を試してもよし。
BURP法は甲状軟骨を助手に背側(Backward)、上方(Upward)、右側(Rightward)に圧迫(Pressure)してもらう方法です。

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8828619/
なお、根強い(?)人気がある輪状軟骨圧迫法は全く別の手技です。
これは誤嚥を防ぐために開発された方法であり(しかし、誤嚥を防ぐ効果はない)、喉頭展開の視野を悪化させる可能性があるのでやらない方がいいです。