りんごの街の救急医

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症例109:気道分泌物により声門が確認できない59歳肥満女性(J Am Coll Emerg Physicians Open. 2021 Jan 14;2(1):e12344.)

病歴/身体所見

・56歳肥満女性
造影剤投与後にアレルギー反応を起こしERへ搬入
頻呼吸で呼吸困難を訴えていた
・軽度の下腿浮腫はあったが、咽喉頭の浮腫はなかった
 

検査と処置

・血液検査…BNP218pg/mL
 
 
RSIを行ったが、吸引直後に気管からの水様性分泌物が再度蓄積し声門が見えなくなってしまった

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さて、どうしよう…?

・吸引を行いながら喉頭展開し、声門が視覚化されたところで食道内に吸引カテーテルを挿入することで視野が得られ、気管挿管を成功させた

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診断

吸引補助下喉頭鏡検査気道浄化(suction-assisted laryngoscopy airway decontamination:SALAD)を要した電撃性肺水腫
 
 
気管挿管中に肺からの分泌液を直視できることは、原因不明の呼吸不全の状態において、電撃性肺水腫の診断をするのに有用な所見である
 
BNPなどの検査所見は異常が出現してから1時間ほどしてからでないと上昇しないことがある
(J Am Coll Cardiol. 2007 Dec 18;50(25):2357-68./Am J Emerg Med. 2015 Apr;33(4):605.e5-6.)
 
・CXRに関しても、うっ血性心不全診断には中等度の感度がある程度
(Heart. 2006 May;92(5):695-6.)
 
・嘔吐を含めた分泌物で視野が確保できないような気管挿管の際にSALAD法というテクニックを使用すると、断続的に排液を行うことができ視野を確保できることがある
※本症例ではプールしていた気道分泌物を除去するのに有用であった
喉頭展開を行い、右手で硬性吸引カテーテルを持って分泌物を吸引する
喉頭展開したまま硬性吸引カテーテルを患者の左口角に移動させて先端を食道内に挿入する
③右手に気管チューブを持って挿管を行う
(West J Emerg Med. 2017 Jan;18(1):117-120.)
 
 

まとめ

・嘔吐する患者への気管挿管では、SALAD法という手段も覚えておこう。