「ヨシッ、STEMIだ!」
循環器内科を即座にコール!
しかし、循環器内科医はエコーを当てながら
「う~ん、これは胆嚢炎だね。外科の先生にコンサルトしておきますね~」
なんてパターンにたまに遭遇します。
心電図でSTEMIの所見があるのに、STEMIじゃないことなんてあるの!?
そんな疑問に答えていきます。
STEMIの見つけ方
ERで遭遇する疾患のなかでも、STEMIは緊急性と重症度の観点から最も重大な疾患の1つに数えられます。
冷や汗をかいていて両肩に放散するような胸痛があれば急性心筋梗塞の存在をすぐに疑えると思いますが、ときに非典型的な徴候で受診することがあります。
「へそから上のあらゆる症状」で一度は急性心筋梗塞の存在を疑うのがよいでしょう。
それほど時間がかからず、侵襲的でもないので、ERでは心電図をとる閾値を低く設定しておくことが、急性心筋梗塞(とくにSTEMI)を見逃さないためのコツです!
受診から10分以内に12誘導心電図検査を行い、STEMIがないかを迅速に評価しましょう!
もし心電図からSTEMIを疑えば、即座に循環器内科をコールして心臓カテーテル室へ直行コースになります。
STEMI mimicsも考えておこう!
ミミック (Mimic) は、「真似る」「似せる」を意味する英単語であり、生物学における「擬態」を意味します。
これにちなんでドラゴンクエストシリーズでは、宝箱に擬態したモンスターとしてミミックが登場しています。
宝箱を擬態しているだけあって防御力が高く生半可な火力では満足なダメージを与えることができず、なかなかの強敵です。
それはさておき、、、
心電図でSTEMIの所見を取りながら、実はSTEMIではなく別の疾患であるということはしばしば経験します。
これをSTEMI mimicsとしてまとめました。
"Celebration (お祝い)" のゴロで覚えておきましょう!
(STEMIじゃなくてラッキーってこと、、、ラッキーではない疾患もたくさん含まれていますけど)
特に注意を要するものとして、いくつか紹介します。
Cholecystitis(急性胆嚢炎):胆嚢炎はSTEMI mimicsとして有名です。
あらゆる心電図変化を起こしますので要注意です。
(JSLS . 2011 Jan-Mar;15(1):105-8.)
たとえばこれ。
V5、V6、aVF誘導で1mmのST上昇、IIおよびIII誘導で2mmのST上昇がありますが、急性胆嚢炎であった症例報告です。
以下の記事も参考にしてください。
Right ventricular infarction(右室梗塞)をみたときも要注意です。
それは急性大動脈解離による変化かもしれません。
下壁梗塞をみたら、右室梗塞を疑いましょう。
特に、II誘導よりIII誘導でのST上昇が大きい場合には右室梗塞があるかもしれません。
右室梗塞があれば、大動脈解離を常に疑ってかかりましょう。
なにも考えずにDAPTやヘパリン化を始めてしまうと、治療が逆方向に進んでしまう可能性があります。
現実的には、
①STEMI疑いとして、循環器内科をコールする
~~以下は循環器をコールしたあとにチェック~~
②循環器内科の到着を待つ間にAMIらしさを見積もるための検索を簡単に行う
(病歴聴取:発症様式、リスク因子など、エコー、レントゲン、血液検提出など)
③上記検査時に一応胆嚢は軽くチェックしておく
④電解質異常は血液ガス分析で簡単にチェック
くらいはしておくといいのかなと思っています。
心臓系の評価は完全に循環器内科にお任せしつつ、別の可能性もほんの少し考えておくと、うまく循環器内科と協力体制を築けるかもしれませんね。