高カリウム血症かつECG変化がある場合、それは超緊急で対応が必要です。
治療方針としては以下の3 stepが必要なことはご存知の通りです。
➀細胞膜の安定化
②細胞外から細胞内へカリウムを押し込む
③体外へカリウムを排出する
(④原因検索)
膜の安定化といえばカルシウム製剤ですが、高Ca血症がある場合やジギタリス内服中には使用しづらいと感じます。
ジギタリス内服をしている患者にカルシウム製剤を投与すると、ジギタリスの心毒性を助長させさらなる不整脈を引き起こすため禁忌とされています。
それでも使ってしまうことはありますが、生食に溶いて20-30分かけて投与するなどの一工夫を要します。
さて、他にリスクを回避する方法はないものか…
reviewがあったので読んでみます。
Dépret F, et al.Management of hyperkalemia in the acutely ill patient.
Ann Intensive Care. 2019 Feb 28;9(1):32.
PMID: 30820692
高張食塩水を投与するというのは作戦のひとつとして考えられそうです。
・高張食塩水の投与は、心筋細胞による活動電位の伝導速度を増加させる・高張食塩水は膜の安定化剤として作用し、カルシウムの注入が危険な場合、カルシウムの代替として考慮される可能性がある
上記は1960年代の動物実験からのデータによりますが、どうも高張食塩水は心筋細胞の活動電位の伝導速度を増加させる結果、膜安定化の効果があるようです。
機序は以下のようになります。
・高カリウム血症では電位依存性Naチャネルが作動しにくくなっており、Naの細胞内への移動が起こりにくくなっている
→これにより活動電位の伝導が遅くなっている
→不整脈を誘発
・高張食塩水は細胞外Na濃度を上昇させることで細胞内へのNaの移動を促進し、活動電位伝導速度を上昇させる
・カルシウムはCaMK IIと結合して電位依存性Naチャネルを活性化させて細胞内へのNa移動を起こさせる
実際的な使用方法は、以下のようになります。
・20%NaCl10-20ml5分間で投与・8.4%炭酸水素ナトリウム100ml投与
※20%NaClはないので、10%NaClを倍量投与すればいいんでしょうか?
※意外と知られていませんが、8.4%炭酸水素ナトリウム(メイロン)は6%食塩水です。めっちゃ濃いです。
hypervolemiaがある場合も多いのでうっ血を起こしそうで、高張食塩水投与には少し気が引けるところもありますが、手段のひとつとして持っておくと良いと思いました。
まとめ
・高カリウム血症+ECG変化ありでは、第一選択としてカルシウム製剤を投与する
・高Ca血症やジギタリス内服中などの患者に対しては高張食塩水投与により膜安定化が得られる可能性がある
高カリウム血症に対するGI療法で低血糖を起こさせずに安全に行う方法については以下を参照してください。