りんごの街の救急医

青森県弘前市の救急科専門医による日々の学習のまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。

高カリウム血症のGI療法 低血糖を起こさずに安全に行う方法

カリウム血症に対するGI療法はERや病棟においてよく行われる治療法です。

 

投与方法としてはグルコース25g+インスリン10単位が標準的治療として教科書には載っていますが、これって結構低血糖を起こしますよね。

文献的には最大75%の症例で低血糖を起こすそうです。

 

そこで、今回は安全かつ有効なGI療法について見ていきましょう!

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(J Emerg Med. 2019 Jul;57(1):36-42.)

 

 

一般的な高カリウム血症治療のまとめ

ひとまず、高カリウム血症の治療法のまとめです。
 
各治療がどういった効果があるのかを意識して治療することがポイントです。
細胞膜を安定化させて致死的不整脈を防ぐための対応なのか、細胞外から細胞内へカリウムを押し込んで一時的にしのぐ対応なのか、体外へ排出させる治療法なのか…。 
また、それぞれの治療がどのくらいで効果発現するのか/持続するのか、どのくらいのカリウム降下作用があるのかを知っておくことも大切です。
 
以下に簡単な表でまとめておきます。
薬剤
投与量
onset
持続時間
効果
塩化カルシウム
グルコン酸カルシウム
1g(カルチコール10ml)を
5分以上かけて静注
<3
30-60
細胞膜安定化
グルコース+インスリン
グルコース25g+インスリン
(ヒューマリンR10単位静注
<15
4-6時間
Na/K-ATPase活性化
0.6-1.2mEq/L低下
アルブテロール
10分以上かけて10-20㎎吸入
15-30
2-3時間
Na/K-ATPase活性化
0.5-1.5mEq/L低下
重炭酸ナトリウム
50-100mEq(メイロン50-100ml
点滴静注
5-10
2
アシドーシスが強い場合のみ考慮。0.4mEq/L程度の低下
利尿薬
基礎疾患に合わせて
15
1-3時間
末期腎不全で無尿の患者には効果なし。
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム
15-30g経口または経腸
2-24時間
0.14-1.0mEq/L
透析
12
1-2mEq/L
(Emerg Med Clin North Am. 2014 May;32(2):329-47./Emerg Med Pract. 2016 Nov;18(11):1-24.)

 

それぞれの治療方法については注意点はありますが今回は割愛します。

いつか目新しい話題があればまとめたいと思います。

 

 

さて、ここからが本題です。

 

 

GI療法について

低血糖のリスクファクター

インスリンは細胞外のNa+-H+ antiportersを刺激
 →細胞内にNaを流入させる
 →細胞内Na濃度が上昇するとNa+-K+ ATPase transporterが刺激される
 →細胞外にNaが排出され、細胞内にKが引き込まれる
 
インスリン10単位で血清カリウム値は0.6-1.2mEq/L低下する
 ◦効果発現は15分以内とされる
 
インスリンによる低血糖発症率は8.7-75%と報告されている
 
結構高率に低血糖を発症します。頻回なフォローは必要になります。
 
低血糖のリスクが高い患者は以下
 ◦腎機能低下…OR 1.12, 95%CI 1.02-1.23
 ◦糖尿病既往なし…OR 2.3, 95% CI 1.0– 5.1
 ◦治療前の血糖値が低値
  ‣血糖値<140mg/dL…OR 4.3, 95% CI 1.4– 13.7
  ‣血糖値<120mg/dL…OR 4.44, 95% CI 0.9– 21.57
 ◦低体重重篤低血糖は低体重でより顕著
  ‣血糖値<40mg/dL…55.8kg vs 血糖値41-69mg/dL…92kg
 ◦女性…OR 3.2, 95% CI 1.1–9.1
上記リスクファクターを1つ以上持つ場合にはGI療法の用量調整をすべし!

よくいますが、やせた高齢CKD女性なんて超ハイリスクです。。。

 

 

そこで、ここからはGI療法の用量についてどのくらいが至適なのか見ていきます。

 

 

全ての患者にインスリン10単位投与は妥当か?

・多くのERではインスリン10単位投与が一般的ではあるが、最大75%の患者が低血糖を発症する
 →全ての患者に一律で10単位投与することは妥当か考慮すべき
 
インスリン5単位または0.1単位/kgは10単位投与と比較して効果は同等で、低血糖発症率を低下させる可能性あり
 ◦特に多数のリスク因子がある場合には低用量での投与が推奨されそう
・血糖値>250mg/dLの場合にはブドウ糖投与は省略可能
 
研究
GI投与方法
低血糖発症率
Pierce et al.
+インスリン5単位 vs 10単位
有意差なし
有意差なし
LaRue et al.
+インスリン5単位 vs 10単位
有意差なし
19.5% vs. 28.6%
有意差あり
Garcia et al.
+インスリン5単位 vs 10単位
※92%がブドウ糖25-50g投与
有意差なし
※baseline K>6のサブグループ解析では10単位投与の方が有意にK低下
有意差なし
Wheeler et al.
+インスリン0.1単位/kg vs 10単位
有意差なし
有意差なし
Brown et al.
+インスリン0.1単位/kg vs 
医療者の裁量
※ほぼ同様の投与量であったことが事後に判明
有意差なし
有意差なし
 

全ての患者にブドウ糖25g投与は妥当か?

ブドウ糖25g投与+インスリン投与が高K血症の治療として推奨されてはいるが…
 ◦低血糖は13-75%で発症してしまう
 ◦インスリンの作用時間が4-6時間に対し、ブドウ糖静注の血糖上昇作用は1時間
  →CKDがあればインスリンリアランスがさらに低下し低血糖リスクは上昇する
 
血糖値のbaseが低い場合には、ブドウ糖投与は高用量または持続静注がよいかもしれない
 
研究
GI投与方法
低血糖発症率
Coca et al.
10% ブドウ糖液500ml
4時間以上かけて投与
・6.1%
・平均3.5時間で発症
Wheeler et al.
+インスリン10単位または0.1単位/kg
ブドウ糖製剤やその投与時間については言及なし
・19.7% vs 10.6%
・発症時間については言及なし
Farina et al.
+ブドウ糖25g vs 50g
ブドウ糖製剤やその投与時間については言及なし
・投与1時間後
→8.3% vs 15.8%
・投与4時間後
→5% vs 4.2%
※1時間時点では50g投与群は有意に高血糖だが、4時間時点では有意差なし
・血糖値<110mg/dL群では、ブドウ糖50g投与は有意に1時間時点での低血糖発症率を低下(10.8% vs. 35.4%)
※この群では高血糖発症率に有意差なし
 
 
 

推奨されるGI療法レジメン

以上の議論により現時点で推奨されるGI療法レジメンは以下になります。

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血糖値<150mg/dLまたは以下のうち2つがある場合にはGI療法による低血糖リスクあり
①AKI/CKD ②糖尿病既往なし ③体重≺60kg ④女性
↓ 上記を満たす場合には以下の3つの治療のうち1つを選択する
インスリン5単位+ブドウ糖25-50g
インスリン0.1単位/kg(max10単位)+ブドウ糖25-50g
インスリン10単位+ブドウ糖≧50g
※血糖値≧250mg/dLの場合にはブドウ糖の投与は不要
ブドウ糖投与については持続投与を行なってもよい
 例)50%ブドウ糖液50ml静注に引き続き10%ブドウ糖62.5ml/hrで4時間投与 
低血糖発症は通常2-4時間程度だが最大7.5時間まで観察される
 →インスリン投与後4-6時間は1時間に1回の血糖測定をした方がよい
 

まとめ

・一般的なdoseのGI療法は最大75%で発生する
低血糖リスクを評価し、それに応じてGI療法レジメンを選択する