病歴/身体所見
・55歳女性
・2週間前からの掻痒感を伴う発疹と増悪する倦怠感のためER受診
・腹部より発疹が出現し、それはvancomycinとcefepime投与から9日が経過していた
・全身の浮腫性紅斑性局面を認め、膿疱や水疱により覆われていた
・口腔粘膜は侵されていなかった
検査
・血液検査…乳酸6.4mmol/L, 白血球28900/mcL
診断
急性汎発性発疹性膿疱症(Acute generalized exanthematous pustulosis:AGEP)
・ICUに入室となった
・皮膚生検により診断確定された
・抗菌薬中止とステロイド投与により改善した
・薬物投与後数時間以内に発症する急性および重度の皮膚反応
・発疹は広範な浮腫性紅斑を伴う多数の非毛包性無菌性膿疱が特徴的
◦発疹は通常顔面または間擦部位から始まり、数時間~数日以内に拡大する
‣掻痒感や灼熱感が出現し、紅斑および数百に及ぶ小膿疱へと発展する
◦1-2週間は病変を認め、その後は表面の落屑が生じる
‣最大15日間持続するself-limitingな疾患
(J Cutan Med Surg. Mar-Apr 2002;6(2):122-4.)
・しばしば発熱を呈する
・年間発症率は100万人あたり1-5人ほど
・病態生理学的には薬物特異的Tリンパ球が関与するIV型アレルギー反応が関与
◦最終的に好中球活性化サイトカイン/ケモカイン/IL-8が放出される
・AGEPの原因の90%以上が薬物による
◦ampicillin/amoxicillin, macrolides, quinolones, hydroxychloroquine, sulfonamides, imatinib, diltiazem, 抗てんかん薬, 抗真菌薬など
(Indian J Dermatol. 2015 Mar-Apr;60(2):212./Ann Dermatol Venereol. 2002 Mar;129(3):294-7.)
・特定の薬剤への2回目の曝露で発症することがある
・血液検査では白血球増多症を伴う
◦好中球増多や好酸球増多がみられる
・重症の場合、皮疹以外の全身症状が出現することがある
◦低血圧/AKI/肝機能異常/呼吸不全/乳酸アシドーシスなど
◦高齢者で複数の併存疾患があると多臓器不全のリスクが高い
(Int Arch Allergy Immunol. 2017;174(2):108-111.)
・TENや好酸球増多症や全身症状を伴う薬物反応との鑑別はときとして困難になる
◦これらの疾患では口腔粘膜の異常、Nikolsky反応陽性、好酸球増多症、臓器障害が起きる頻度が多い
(J Cutan Pathol. 2001 Mar;28(3):113-9.)
・AGEPによる死亡率は5%ほど
・局所および全身ステロイド投与が治療となり、重症の場合にはInfliximabやEtanerceptが治療選択肢になる
・臨床的にも病理組織学的にも急性期のgeneralized pustular psoriasis (GPP)とAGEPは区別がつきづらいことがある
(J Cutan Pathol. 2010 Dec;37(12):1220-9.)
以前もご紹介したAGEPですが、こうなるとSJS/TENとの鑑別は難しくなってきます。
皮膚生検を要するのでしょうが、被疑薬の中止をしつつステロイド投与などについては皮膚科と相談するのがよいでしょう。
まとめ
・AGEPは原因薬物投与数時間後から急性発症する、広範な浮腫性紅斑を伴う多数の非毛包性無菌性膿疱が特徴的な皮疹である
・原因となる薬物は2回目の曝露でもAGEPを発症することがある