りんごの街の救急医

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症例125:口唇へのヒアルロン酸注入後に口唇腫脹と皮疹が出現した37歳女性(Ann Emerg Med. 2021 Mar;77(3):315-337.)

病歴/身体所見

・37歳女性
4日前にヒアルロン酸注入を受けてから左下口唇痛と腫脹、皮疹が出現したとしてER受診
・左下口唇の内外に垂直分布性の多発性膿疱と変色を認めた
 

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診断

ヒアルロン酸注入後の血管閉塞
・形成外科医にコンサルト、診察の上、血管閉塞の診断となった
 
 
・過去30年の間にヒアルロン酸注入はより頻繁に使用されるようになってきている
(J Clin Aesthet Dermatol. 2015 Dec;8(12):42-7./JAMA Facial Plast Surg. 2018 May 1;20(3):207-214./J Clin Aesthet Dermatol. 2019 Jun;12(6):E65-E72.)
 
・臨床的に重大な合併症はまれだが、使用量自体の増加により合併症の報告数は増えてきている
(JAMA Facial Plast Surg. 2018 May 1;20(3):207-214.)
 
注入による血管系の圧迫または動脈内への直接注入による動脈閉塞のいずれかが原因で血管障害を発症することがある
 ◦治療直後~数時間後の強い疼痛、不快感、皮膚蒼白、網状皮斑、変色などが主要徴候
(J Clin Aesthet Dermatol. 2015 Dec;8(12):42-7./JAMA Facial Plast Surg. 2018 May 1;20(3):207-214.)
 
・壊死を防ぎ、完全な回復を得るためには迅速な診断と治療が重要
(J Clin Aesthet Dermatol. 2019 Jun;12(6):E65-E72./J Drugs Dermatol. 2013 Oct;12(10):1181-3.)
 
・疼痛緩和目的にヒアルロニダーゼ注射
 
・血管拡張を刺激して血流供給を回復するために温水ガーゼや局所ニトログリセリンペースト、アスピリン投与などを考慮
 ◦重篤なケースでは低分子量ヘパリンとプロスタグランジンE1塗布が検討される
(J Clin Aesthet Dermatol. 2015 Dec;8(12):42-7./J Drugs Dermatol. 2013 Oct;12(10):1181-3.)
 
 
動脈閉塞ですか…。あまり疑いませんでした。
翌日皮膚科(もしくは形成外科)への受診指示ではなく、すぐに治療開始がよさそうです。
 
 

まとめ

・形成外科的処置としてのヒアルロン酸注入は最近件数が増えてきており、それに伴い合併症も多く報告されるようになっている

ヒアルロン酸注入による動脈閉塞は重篤な合併症に分類され、治療直後~数時間以内の疼痛や皮疹、変色などを起こす

・早期診断と早期治療が整容を保つために重要である