りんごの街の救急医

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症例78:急激に全身に発疹と発熱が出現した7歳男児(Am J Emerg Med. 2021 Jan;39:254.e5-254.e7.)

病歴/身体所見

・7歳男児
急激に発症した全身性進行性発疹と発熱のためER受診
・受診1日前、脱毛症に対してfluconazole内服が処方された
・乾癬などの皮膚疾患の既往や家族歴はなかった
広範囲な紅斑および非毛包性の多発性膿疱を認めた

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・頭皮には膿瘍形成と脱毛症を伴う化膿性局面を認めた

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検査

・血液検査では好中球増多症を認めた
・皮膚生検により、好中球/リンパ球/好酸球を含む表在性および血管周囲炎症細胞が混在した海綿状角膜下/表皮内膿疱が認められた

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診断

急性汎発性発疹性膿疱症(Acute generalized exanthematous pustulosis:AGEP)
 
・局所ステロイドにより治療され、4週間後には発疹が改善した
・抗真菌薬含有シャンプーと8週間のGriseofulvinが処方され、発毛を認めた
 
 
 
薬物投与後数時間以内に発症する急性および重度の皮膚反応
 
・発疹は広範な浮腫性紅斑を伴う多数の非毛包性無菌性膿疱が特徴的
 ◦発疹は通常顔面または間擦部位から始まり、数時間以内に拡大する
 ◦1-2週間は病変を認め、その後は表面の落屑が生じる
  ‣最大15日間持続するself-limitingな疾患
(J Cutan Med Surg. Mar-Apr 2002;6(2):122-4.)
 
・しばしば発熱を呈する
 
・年間発症率は100万人あたり1-5人ほど
 
・病態生理学的には薬物特異的Tリンパ球が関与するIV型アレルギー反応が関与
 ◦最終的に好中球活性化サイトカイン/ケモカイン/IL-8が放出される
 
AGEPの原因の90%以上が薬物による
 ◦ampicillin/amoxicillin, macrolides, quinolones, hydroxychloroquine, sulfonamides, imatinib, diltiazem, 抗てんかん薬など
 ◦抗真菌薬への曝露によるAGEPも報告されている(特にterbinafine)
  ‣本症例のようなfluconazoleによるAGEPも少数報告されている
(Indian J Dermatol. 2015 Mar-Apr;60(2):212./Ann Dermatol Venereol. 2002 Mar;129(3):294-7.)
 
特定の薬剤への2回目の曝露で発症することがある
 
・血液検査では白血球増多症を伴う
 ◦好中球増多や好酸球増多がみられる
 
・重症の場合、皮疹以外の全身症状が出現することがある
 ◦低血圧/AKI/肝機能異常/呼吸不全/乳酸アシドーシスなど
 ◦高齢者で複数の併存疾患があると多臓器不全のリスクが高い
(Int Arch Allergy Immunol. 2017;174(2):108-111.)
 
・AGEPによる死亡率は5%ほど
 
局所および全身ステロイド投与が治療となり、重症の場合にはInfliximabやEtanerceptが治療選択肢になる
 
・臨床的にも病理組織学的にも急性期のgeneralized pustular psoriasis (GPP)とAGEPは区別がつきづらいことがある
(J Cutan Pathol. 2010 Dec;37(12):1220-9.)
 
 
いつでも薬剤歴は重要です。
あまり出会いませんが薬疹という広いカテゴリーのなかの重要な鑑別のひとつです。
 

まとめ

・AGEPは、広範な浮腫性紅斑を伴う多数の非毛包性無菌性膿疱を特徴とする、薬物投与後数時間以内に発症する急性および重度の皮膚反応

・AGEPはしばしば発熱や好中球増多症を伴う

・AGEPの原因の90%以上は薬物で、初回ではなく2回目の曝露で発症することもある

・高齢で併存症が複数ある場合には特に皮疹以外の重度の全身症状を呈することがあり、死亡率は5%ほどと報告されている